老後を健康的に暮らすには何が必要か。精神科医の保坂隆さんは「69歳のある男性は、仕事や人間関係に不満を感じてもずっと口に出さなかったところ、50歳を超えてから『帯状疱疹』と診断された。不平不満を溜め込むあまり、それがストレスになり免疫力が低下していたことが原因だ。それからは、奥さんにときどき愚痴を言うようになり、帯状疱疹もすっかり回復した」という――。

※本稿は、保坂隆『楽しく賢くムダ知らず 「ひとり老後」のお金の知恵袋』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

首に手を当てている高齢男性
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孤独死という言葉が何度も脳裏をよぎった瞬間

やや長くなりますが、71歳の女性の独白を紹介したいと思います。

「3年ほど前に夫に先立たれてからひとり暮らしをしています。寂しくないといえばウソになりますが、それほど不自由さは感じずにここまですごしてきました。

死ぬまでこのままひとりで住み慣れた家で暮らそうと思っていたのですが、つい先日、熱を出して、その決心が揺らぎ始めました……。

高熱が出てひとりで寝込んでいるときはとても不安で、『インフルエンザだったらどうしよう。いや、コロナかもしれない。このまま死んでしまうかも……』との思いに取りつかれ、何度も何度も救急車を呼ぼうとしました。

3日目に熱が少し下がったので、タクシーを呼んで病院に行きました。幸いインフルでもコロナでもありませんでしたが、ひとり暮らしの寂しさや不安を痛切に感じ、孤独死という言葉が何度も脳裏をよぎりました……」

病気やケガをして心細くならない人はいないでしょう。ましてや、ひとり暮らしともなるとなおさらです。

元気なうちは「ひとりでなんとかなる」と強がっていても、体の自由がきかなくなったり寝込んだりすると、「やっぱり誰かの助けがないと無理かもしれない」と思ってしまうものです。