まったく異なる「知識の枠組み」を持っている
そう、私たちはそれぞれがまったく異なる「知識の枠組み」「思考の枠組み」を持っているため、たった1つの名詞「ネコ」と聞いたときでさえ、無意識に頭の中に思い浮かべるものはまったく別ものである可能性がとても高いのです。
そして、こうした脳内で描かれるイメージを共有することは難しく、隣の人がまったく違うイメージを持っているとわかっても、そのイメージを明確に聞き取ることすら、私たちにはできないのです。
「すでに使いこなしている言語」に当てはめて捉えるしかない
「知識や思考の枠組み」が互いにまったく同じであれば、話した内容はすんなりと理解されるかもしれませんが、現実には、そんなことはめったに起こりません。
なぜなら一人ひとりの学びや経験、育ってきた環境は違いますし、仮にまったく同じ環境で育ち経験をしたとしても、それぞれの興味関心が異なれば、形成される「枠組み」が変わってしまうからです。
こうした枠組みのことを、認知心理学では「スキーマ」と呼んでいます。
このスキーマは、私たちが相手の言葉を理解する際、つまり何かを考える際に裏で働いている基本的な「システム」のことです。スキーマは、脳のバックヤードでつねに稼働しています。
スキーマの存在は、外国語を例にとるとわかりやすくなります。なぜならそれぞれの言語によって、ある単語が持つ意味の体系は、ほとんどのケースで異なるからです。
言語によって体系は異なっても、学習者は、自分がすでに知っていて日常的に使いこなしている言語(いわゆる母語。日本人ならば日本語)にあてはめて、新しい言語を捉えるしかありません。