「動作」と「状態」ははっきり区別される

英語では、「着ている状態」は「wear」ですが、「着る動作」は「put on」で表します。同じ「着る」でも、状態と動作ははっきりと区別され、幼い子でも間違えることはありません。

そのため、目の前に裸の人がいて、なんでもいいから衣類を身にまとってほしいときは、

「Put on your clothes!」

となり、

「Wear your clothes!」

とは言えません。

一方、日本語の「着る」には、状態と動作の区別がありませんから、「今すぐ服を着なさい!」と言うときは「put on」の意味で「着る」が使われていますし、「あの人が着ている服」と言うときは「wear」の意味で「着る」が使われることになるのです。

外国語のスキーマごと学ばなければ使いこなせない

このように、私たちは特に意識することもなく物事を母語のスキーマで考えているため、外国語を学習するにはそのスキーマごと学ばなければ、自然に使いこなすことはできません。

日本語の文を書いて、1語1語、和英辞典で合う単語を拾っていっても、自然な英文は作れないのです。

なお、外国語学習におけるスキーマの違いと、それを克服するための方法論は、拙著『英語独習法』(岩波新書)を参照してください。

【図表3】実は「着る」と「wear」は使える範囲が違う
実は「着る」と「wear」は使える範囲が違う(出所=『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』)