“wear”は日本語の「着る」とまったく同じではない

日本人が英語を学ぶ場合で考えてみます。

多くの人は、英語学習というと、

wear――着る

など、学習したい英単語に該当する日本語をセットで覚えるのではないでしょうか。

しかし、実際には「wear」という英単語は、日本語の「着る」とまったく同じ意味なわけではありません。

ズボン、マフラー、手袋、メガネ、化粧も英語ではすべて「wear」で表しますが、日本語では、それぞれ、はく、巻く、つける、かける、するなどの動詞が用いられます。

この、それぞれの言語の単語がカバーする意味の範囲の違いは、特にスキーマの差が現れやすく、学習を困難にする要素でもあります。

“wear”は日本語の「着る」とまったく同じではない
写真=iStock.com/LaylaBird
“wear”は日本語の「着る」とまったく同じではない(※写真はイメージです)

日本語をベースに理解している

実際、私が以前行った調査で、日本の国立大学の学生さんに、ズボン、マフラー、手袋、メガネ、化粧などについて「wearを使えるか」という質問し、○か×かで答えてもらいました。

すると、日本語で「着る」と表現する範囲は○とし、日本語では別の表現を用いるところは×をつける傾向が顕著にありました。

本当は「wear」と「着る」では表す範囲が異なっているのにもかかわらず、それに気がついていないのです。

ただし、日本語の「着る」が「wear」よりも意味の範囲が狭い、とも言い切れません。というのも、日本語では「着る」と表現するのに、英語では「wear」が使えないシチュエーションもあるからです。それは、「動作としての着る」です。