上場基準のハードルを引き上げる必要がある
上場企業の大型化と企業数を減らす第一歩として、まずは上場基準のハードルを引き上げる必要があると思います。現状において、東証プライム市場の上場基準は流通株式時価総額100億円以上、スタンダード市場は同10億円以上です。この金額をある程度まで引き上げれば、必然的に上場企業は減るはずです。
そしてもう一つ、企業買収がもっと頻繁に行われるようになれば、上場企業が減る一方で事業規模は相応に拡大するでしょう。それには、「企業買収における行動指針」に則り、忌避感や先入観を取り除いて真摯に向き合う必要があります。たとえ経営者が嫌う買収者から買収提案を受けたとしても、企業価値向上の観点からは検討に値するかもしれません。特に、これまで「同意なき買収」に手助けしなかった銀行や証券会社などのアドバイザーが、そろそろその企業や日本経済全体の将来を考えて、変節してくれることを望むばかりです。
それが当たり前になれば、株価が低迷している企業は「同意なき買収」によって買われやすくなります。それはつまり、ようやく市場原理が正常に働くことを意味します。
「上場企業」という肩書がステイタスになっている
日本に上場企業が多いのは、その本来の意義とは別に、「東証一部上場」、「東証プライム市場上場」といった“肩書”が社会的ステイタスになっていることも一因だと思います。まるで資格や免許のように、上場企業なら安心、信頼できるというイメージが定着しているようです。
例えばかつて、我々はあまりにも成長への意思や計画性が感じられない複数の投資先企業に対し、上場廃止を勧めたことがあります。しかしある1社の社外取締役はそれを「上場していないと取引先から信用されない」「上場企業じゃないといい人材が集まらない」という理由で反対されました。投資先企業にかぎらず、こういう話はよく見聞きします。
しかし、これは嘘です。業界には同社より規模の大きい会社が3社あるのですが、2社は非上場です。上場していなければ仕事ができない、という状況ではありません。これについてお尋ねすると、先方は黙ってしまいました。上場を維持する合理的な理由を説明できないわけです。