賛否両論だったイチローの大活躍

イチローは新人の年にメジャー断トツの242安打を放ったが、その2割は足で稼いだボテボテの内野安打であり、試合を決めるような長打はほとんどないじゃないか、と。そもそも安打数が多いのは、イチローが「早打ち」すぎて四球を全然選ばないからで、打率が高い割には出塁率が低いじゃないか、と。

今日のМLBにおいて打者の総合的な能力を最も適切に測る指標とされているOPS(出塁率+長打率)の値を見ると、2001年のイチローは.838で、リーグ27位にすぎなかった。

当時はまだ打率や安打数、盗塁数といった「オールドスクール」な数字が重視されていたためイチローはMVPに選ばれたが、これが20年、いや10年遅かったら選ばれていなかった可能性が高い。242安打のイチローではなく、OPSが1.000を超えていたジェイソン・ジアンビやアレックス・ロドリゲスといった強打者がMVPに輝いていたはずだ。

日本最高の強打者、松井秀喜すら「地味」

スピードはあるがパワーに欠けるイチローは、見栄えの華やかさのわりにチームへの貢献度が低い……そんな声を覆すべく、というわけではないが、イチローの移籍から2年後の2003年、今度は日本最高のホームランバッターである松井秀喜がヤンキースに入団した。

松井秀喜(写真=Keith Allison/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons)
松井秀喜(写真=Keith Allison/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

松井はメジャー屈指の強力打線で主軸打者のひとりとして活躍したが、野茂やイチローが見せたセンセーショナルな活躍に比べると、松井のパフォーマンスは地味だった。

日本でシーズン50本塁打を放った長打力も、メジャーの強打者たちの間では突出したものにならず、松井はせいぜい「チャンスに強い中距離打者」といった役回りに落ち着いた。イチローは時に批判を受けながらも、なんだかんだでMLBの「レジェンド」に仲間入りしたが、松井はそこまで至らなかった。

日本には、イチローのように技術とスピードで勝負できる打者はいるが、パワーでメジャーリーガーに太刀打ちできる打者はいない。松井のやや地味な活躍は、そうした認識を日米のファンに植え付けた。実際、2000年代にはほかにも松井稼頭央や井口資仁、中村紀洋、城島健司、岩村明憲、福留孝介ら日本を代表する強打者が続々と渡米したものの、その多くは期待外れに終わった。