ダルビッシュ以降、エース格が続く

松坂の渡米から5年後、ダルビッシュは「松坂を超える逸材」として、MLBから注目されていた。テキサス・レンジャーズは、レッドソックスが松坂獲得に投じた金額を僅かに上回る投資をして、ダルビッシュを獲得した。

メジャー最初の2年で、ダルビッシュは松坂を上回る活躍を見せた。2年目の2013年は、日本人投手として野茂以来となる最多奪三振のタイトルを獲得し、アメリカンリーグのサイ・ヤング賞投票で2位に入った。

同じ年、ダルビッシュほどは注目をされていなかった岩隈久志も大活躍し、サイ・ヤング賞投票でダルビッシュに次ぐ3位だった。また、この年のワールドシリーズを制したレッドソックスに松坂はすでにいなかったが、代わりに上原浩治と田澤純一がリリーフ投手陣の柱を担っていた。メジャー6年目の黒田もヤンキースのエース格になっていた。

ヤンキースの主力投手となった田中将大

ダルビッシュと岩隈は、野茂の「トルネード投法」のようにトリッキーな技があるわけでなく、またメジャーでは珍しい「フォークボール」一辺倒というわけでもない。ダルビッシュも岩隈も、長身からノビのある速球とキレのある変化球を繰り出して打者を打ち取っていく、極めてオーソドックスな先発投手だ。

2013年に両者をはじめとする日本人投手たちが見せた大活躍は、MLBにおける日本人投手の株を一段と引き上げた。その直後、2013年オフに田中がヤンキースとの超高額契約を結んだ。

田中は日本で24勝0敗という圧倒的な成績を残してはいたが、MLB球団からすると、日本のパシフィックリーグで田中としのぎを削っていたダルビッシュと岩隈が既に大活躍していたことが、田中の「品質」を担保していたはずだ。

田中は2014年から2020年にかけて、ヤンキースの主力投手として78勝を挙げた。日本時代ほど圧倒的な成績は残せなかったが、超大型契約の期待にまずまず応えたと評価していい。その間、新たに海を渡った日本人投手の代表格が、田中と同学年の前田健太、そして打者兼任の大谷だ。