まずは、個人消費が伸びていない。2023年7月の名目小売り売上高は前年同月比でプラス2.5%であり、6月のプラス3.1%よりも下回っている。賃金上昇率がコロナ禍前の水準以下であり、これでは個人消費は伸びない。
また、6月の若年(16~24歳)失業率は21.3%という高い数値であった。将来への不安から中国人がかつてのようにお金を使わなくなっているようである。
行き詰まった「恒大集団」と「碧桂園」
住宅販売も減少している。不動産価格が将来下がっていくと予想している人が多いからである。実際にマンション価格は下落しており、それは不動産業界の不振と関連している。企業の設備投資も拡大していない。対米関係の悪化などにより、輸出が伸びないのではないかという懸念があるからである。
また、政府によるインフラ投資も低迷している。その理由は不動産不況であり、地方政府による土地販売の収入が減って、投資の財源が減っている。不動産業は中国のGDPの4分の1を占めているが、この業界の2023年4~6月期のGDPは、前年同期比マイナス1.2%である。
48兆円の負債をかかえる不動産大手の「恒大集団(エバーグランデ)」が、8月18日、ニューヨークの裁判所にアメリカ連邦破産法15条の適用を申請して、世界に大きな衝撃を与えた。6月末時点で、恒大集団の債務超過額は13兆円に膨らんでおり、販売の目途がつかない開発用不動産は22兆円にもなる。
また、最大手の「碧桂園(カントリー・ガーデン)」は、8月30日、2023年前半の最終利益が9800億円(489億人民元)の赤字に転落したことを発表した。さらに、不動産大手、「融創中国(サナック)」も9月19日、ニューヨークで米連邦破産法の適用を申請した。同社は2021年と2022年に810億ドル(12兆円)の赤字を計上している。負債総額は6月末時点で1兆元(約20兆円)にのぼっている。
規制強化で崩壊した不動産バブル
中国では、1990年代に不動産セクターが民営化されたために、不動産業界が活性化し、2002年頃から住宅ブームが起こった。2008年のリーマン・ショックで住宅価格は一時下落したが、その後の景気回復で勢いを取り戻した。とくに2016年以降は不動産バブルというような状態になり、バブル期~バブル崩壊期の日本が再現されたような状況であった。
投機熱も加わって、不動産価格は上昇し、それで巨万の富を得た層と、高価なマンションなど高嶺の花の庶民との格差が広がり、儲け話に乗る人々の投資熱が続いた。習近平は、この状態を危惧し、「共同富裕」をスローガンに格差是正に取りかかったのである。