因みに、汪洋副首相(共青団、62歳)も第4順位で常務委員会入りしたが、私が2014年4月に都知事として北京を公式訪問したときに、中南海で迎えてくれたのが彼であった。それまで安倍政権下で日中関係は膠着状態であったが、この会談で、民間交流と地方自治体間交流の再開を約束してくれたのが、この汪洋副首相であった。
国際政治の観点からは、第19回中国共産党大会の最大のポイントは、中国が強国への道をさらに進めることを内外に鮮明にしたことである。既に、GDPでは日本を抜いて世界第2位となっており、自信満々であった。
世界一の大国の復活こそが習近平の夢
鄧小平の開放改革路線によって豊かになった中国は、経済力のみならず、軍事力も強化している。明の時代までの中国は世界一の大国であり、近代のわずか1世紀でそうでなくなったのである。世界一の大国の復活こそが習近平の夢であり、その道を今ひた走りに走っている。
2018年3月に開かれた全国人民代表大会は、国家主席と国家副主席の任期を2期10年とする制限を撤廃した。このことによって、習近平体制は盤石のものとなった。毛沢東時代の反省から、鄧小平時代には任期を2期に制限する歯止めを設けたが、この決定はそれに逆行するものである。習近平の任期は無制限になったのである。
また、習近平思想を盛り込んだ憲法改正を実現させた。習近平は閉幕式での演説で、「中国の特色ある社会主義は新時代に入った」と述べ、また「党は国家の最高政治指導力である」と宣言した。この体制は、共産党一党独裁政治であり、民主主義とは相容れない。その国が、21世紀半ばには世界一の大国になることを目指している。
2022年10月、中国共産党第20回党大会は、習近平党総書記の第3期を決めた。また、習近平を党の中央軍事委員会主席にも再選した。李克強の退任も決め、新体制は習近平の側近で固められた。
中国経済に迫る危機
2023年夏、日本政府は、福島原発の処理水海洋放出を開始したが、中国は、日本の水産物の輸入を全面禁止するなど、理不尽ともいえる反日キャンペーンを行い、かえって国際社会の反発を呼び、孤立した。
また、秦剛外交部長(外務大臣)、李尚福国防部長(国防大臣)と相次いで解任された。習近平は政権内の引き締めを図っているようだが、実態は不明である。
さらに、経済では、2021年半ば以降、不動産業界の不振が伝えられた。GDP世界第2位の経済大国であるだけに、中国の不振は世界経済にも大きな影響を及ぼす。
先述したように、かつてはGDPが年に7~8%程度上昇するのが普通であった中国経済が、不調になってきた。それには、ゼロコロナ政策による都市封鎖の影響もあるが、不動産不況も要因である。