YouTubeやTikTokでの人気コンテンツに

また、不自由な自宅生活や、友人との交流が制約されるコロナ禍にあって、人々はSNSにそのはけ口を求めた。カラフルな色やユニークな形、新しい商品が次々に発売されていくグミは、SNSに投稿する格好のネタとなった。

例えば、カンロ。最初の食感はグミだが、食べているうちにマシュマロになる新食感菓子「マロッシュ」を、「15秒でマシュマロになるグミ?」というキャッチコピーで訴求。インフルエンサーを巻き込んだ動画をTikTokで拡散させるなど、ターゲットの利用メディア環境に沿った露出により、売り上げは計画比7割増を果たした。

また、JR東京駅構内グランスタ東京にある直営店「ヒトツブカンロ」と、自社ECサイト「Kanro POCKeT」限定で取り扱う「グミッツェル」も人気だ。パリパリとした食感とグミのしっとりとした食感が特徴。動画共有サイト「YouTube」で、咀嚼(そしゃく)音を楽しむASMR動画(視覚や聴覚に刺激を与えて脳に心地よく感じさせる動画)が相次いで公開され、認知度が向上した。

ドイツのグミブランド「Trolli(トローリ)」の「Planet Gummi(プラネット グミ)」。大陸が描かれた丸いケースに入っており、その見た目から「地球グミ」と呼ばれて話題となり、1袋4個入りで500円以上するにもかかわらず、品切れになるほど人気となった。

「飴ちゃん」から「グミちゃん」へ

グミをコミュニケーションツールとして使う若者も多い。都内私立大学に通う4年生の女性(21)は「コロナ禍で大学に行けずに友達ができなかった。大学にようやく通えるようになったとき、友達づくりのきっかけとしてグミをプレゼントしたりした」と話す。

野村総合研究所によると、若者(20~30代)の3分の1が「気にかけられたい」「話しかけられたい」と思っている(2023年調査)。コロナ禍で孤独を感じた若者も多く、その数は減ってきているものの、新しい友人ができなかったり、知人と疎遠になってコミュニケーション面で悩みを抱えていたりする人も多い。

「『他愛のない話をする機会』は、自然発生的なものが望ましいものの、それらが少ない環境(例えば、在宅勤・学習が依然として多い若者など)では、意識的かつ定期的に機会を提供することが求められる」(野村総研)。仲良くなりたかったり、ちょっと話しかけたりするきっかけとしてのグミの存在。大阪のおばちゃんの「飴ちゃん」ならぬ「グミちゃん」で仲良くなるという、リアルなコミュニケーションにグミが一役買っている。

手のひらに乗せられたクマの形のグミ
写真=iStock.com/kaisphoto
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