※本稿は、和田秀樹『老後に楽しみをとっておくバカ』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
バカへと走らせる「不安」というエンジン
日本人が、常識に縛られやすく、みんなと「右へならえ」になりやすいのは、不安の感情が非常に強いこととも関係があると思います。
内閣府が2022年に実施した「国民生活に関する世論調査」によると、「日頃の生活の中で、悩みや不安を感じているか」との質問に、「感じている」と答えた人の割合は78%にも及びました。
約8割が、不安を抱えている日本人。
では、なぜ日本人は、不安の感情がこれほど強いのでしょうか。
脳内の神経伝達物質の一つに、セロトニンという物質があります。
セロトニンは、脳の興奮を抑えたりイライラや恐怖心といったストレスを抑えたりして、不安をなくし、精神を安定させます。そのため「幸せホルモン」などと呼ばれることもあります。
脳の中で分泌されたセロトニンを、再取り込みを阻害するたんぱく質を「セロトニントランスポーター」と言いますが、このセロトニントランスポーターの数を多く持つ人と、そうでない人がいます。
セロトニントランスポーターの数を多く持つ人は「L(ロング)」型の遺伝子、少なく持つ人は「S(ショート)」型の遺伝子です。
「S(ショート)」型の遺伝子を保有する人は、セロトニントランスポーターの数が少ないので、脳内のセロトニン濃度が低くなりがちになり、不安になりやすいのです。ですから「S」型の遺伝子は、「不安遺伝子」とも呼ばれています。
そして「S」型遺伝子(不安遺伝子)の保有率を、人種別に調べてみると、日本人で約80%、アメリカ人で約45%、南アフリカ人で約28%となっています。
つまり日本人は、圧倒的に脳に取り込まれるセロトニンが不足しがちで、不安になりやすい人種だということです。
振り返れば、日本人がいかに「不安遺伝子」が多い集団であるか、腑に落ちる事象だらけです。