※本稿は、坂東眞理子『与える人 「小さな利他」で幸福の種をまく』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
十分に成功していなくても、他者や社会に貢献できる
多くの人は、「世のため人のために尽くすのはよいことで、他者に貢献する人が多ければよい社会になる」とわかっています。
でも多くの人は「仕事や家族の世話で手いっぱいで、自分にはとてもその余裕はない」「社会や人のために貢献していると、自分のなすべきことがおろそかになってしまう」と考えがちです。
「まず自分の義務を果たすのが優先。余裕ができたら社会や困っている人に手をさしのべよう」というのが多数の考えでしょう。
あるいは、「自分のなすべきこと、たとえば仕事や子育てを成し遂げた高齢者が、社会に貢献するのはよいことだが、若い人、働き盛りの人は、そんな悠長なことなどをする前に、自分自身が成功するよう努力するのが先だ」「社会貢献なんて大資産家で余裕のある人がすべきだ」と考える人もたくさんいます。
しかし現実には、どんな年代の人でも、他者に貢献できます。まだ自分が十分に成功していなくても、他者や社会に貢献すればするほど、自分が幸せになるのです。
まわりの人に対する感謝の言葉を発する、相手のミスや至らなさを許す、上機嫌にふるまって周囲の人の気持ちを明るくする、なども立派な社会貢献の「かたち」です。どんな形でも社会貢献をするほど、本人も幸せになるのです。
ところが、そうした「与える人」に対して「売名的」「偽善的」と批判する人や、「結局、自己満足のために行なっているのだろう」と足をひっぱる人もいます。
しかし、それでくじけないでください。批判をおそれていると何もできません。批判している人は嫉妬しているのです。
日本が「人助け指数」で世界最低グループというのは、「与える人」を悪くいい、悪くいわれるのをおそれて自分は与えない人が多いからだと思います。