ゲームはルールを作った人が勝てる

ゲームの話の延長で、アメリカの強さの理由について、少しお話ししておきます。アメリカが強いのは、ルールを自分たちで決めているからです。

ゲームは、ルールを作った人が勝てます。『ハゲタカ』という小説でも書きましたが、グローバルスタンダードという概念をバブル経済崩壊後の日本に持ち込んだのは、アメリカです。その結果、日本の金融機関がバタバタと倒れました。

「グローバルスタンダード」、つまり世界共通の標準。とても響きのいい言葉ですが、実際は「アメリカンスタンダード」です。日本だけでなく、困惑させられた国が他にもたくさんありました。

アメリカは大変賢い、利にさとい人たちの国なので、ルールを作ったうえで、すべてを奪っていったのです。

ゲームにおいても、前提が大事です。たとえば、「金融の世界を新しくするために必要なのは『フェア』です」と言い、「フェアとは何か」を自分たちで定義する。

そういう中で戦うためには、ゲームのルールが決められてしまう前の段階で「ちょっと待ってください」と言わなければならない。「それは、私たちには認められないルールだ」と粘る必要がある。

「ここがよくわからない」と問い直すことが大切

しかし、たいていの場合、アメリカコンプレックスのせいもあって日本人は弱腰です。戦う前に、負けてしまっている。

この状況を打開するには、国民性というところからのボトムアップが必要です。

真山仁『疑う力』(文春新書)
真山仁『疑う力』(文春新書)

小学生くらいから鍛えるしかない。もちろん、小学生に騙し合いをさせたいわけではありません。活発な議論をしてほしい。議論の際に必要なのは、まず相手の話を聞く姿勢で、その上で、「ここは賛成」「ここがよくわからない」「ここは受け入れられない」と伝える力を磨いてもらいたいと思います。

とりわけ大事なのは、「ここがよくわからない」というリターンを返すことです。

相手の意図を読んで、語っていないところを見抜き、それについてもっとちゃんと語ってほしいと求める。

このトレーニングのためにも、クリスティー作品は非常に役に立ちます。

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