OBの「出戻り採用」を行う企業も

それよりも、業務の内容(ジョブ・アサインメント)を明確に規定し、成果を実現する人にしっかりと報う企業は増加傾向だ(ジョブ型雇用)。経営企画、マーケティング、ITシステム、財務などあらゆる分野で、学士号よりも修士、博士号の取得者を増やし、より高い実績を上げた人材に、チーム、部課の運営を任せる企業は増えている。

そうした変化に合わせ、転職を繰り返し高い給与を手に入れようとする人は増えた。転職市場は活気づき、新卒で入社した企業に定年まで勤めるという終身雇用も崩れ始めた。

生え抜きではなく、外国人を含めた“プロ経営者(他社の経営、事業運営などで高成長を実現した人材)”を経営トップや取締役に招く企業も増えている。人材紹介業者への手数料削減、ミスマッチ防止のため、出戻り採用〔アルムナイ(卒業生・同窓生の意味)採用〕を行う企業もある。

上司と1on1
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです

新卒採用・年功序列にこだわる企業は淘汰される

今後、わが国の労働慣行の崩壊ペースは加速するだろう。成長期待の高い企業の株価が上昇するのと同じで、賃金上昇の可能性も高い企業で働こうとする人は増える。事業戦略などに合わせてリストラを行い、成長期待の高い事業分野で専門人材を増やす企業も増加するだろう。失われた30年を経て、わが国の労働市場はようやく、あるべき姿に向かいつつある。

今後の注目点は、わが国経済全体として、そうした急激な変化に順応することが必要だ。経営者の発想の転換は急務といえる。従来の雇用慣行が正しいと思い込む経営者は、まだ多い。新卒・中途の違いにかかわらず、成長に貢献できる人材を増やし、成果に応じて公平に評価する。それは企業の長期存続に必要だ。

それが難しい企業では、退職者が増える一方、中途採用は難航するだろう。現場の人手不足に拍車がかかる一方、デジタル化などを背景に取引先からの納期前倒しなどの要請は強まりそうだ。無理を重ね、コンプライアンスが軽視される恐れもある。経営者の責任は増す。