プログラミング技能を持つ新卒に「年収1000万円」

特に、世界的にIT先端技術の重要性は急上昇だ。生成AIの開発、導入など急速に世界に普及するテクノロジーを活用するため、年功序列や終身雇用など社内のゼネラリスト人材で対応することは難しい。

業種別にみると、幅広い分野で中途採用は増加した。中でも、IT関連人材の不足は深刻だ。経済産業省によると、2020年に約37万人だったIT人材不足は、2030年に約79万人に拡大する見通しだ。

AIが世界経済の効率性向上に寄与するとの期待が高まる中、IT専門人材の確保は企業の業績に決定的影響を与える。関連分野で、基礎的なプログラミングの技能を持つ新卒者に1000万円近い給与を提示しているNECや、実力あるプロに3000万円を超える給与を支払ったりする国内企業もある。2024年問題に直面した物流や建設、医療などでも中途採用を拡大する事業者は増加傾向だ。

年功序列がチャレンジ精神を阻害してきた

中途採用の強化により、新卒一括採用・年功序列・終身雇用の慣行は崩壊し始めた。新卒一括採用から通年採用へ、就職のありかたは変わり始めた。学生にとって、自らの研究内容などに合わせて、より柔軟に就職先を検討する選択肢は増えた。そのきっかけとして、2018年、経団連は“採用選考に関する指針”を廃止した。

国内の高校を卒業した後に、海外の大学に入学する若者は増えた。学部4年時から修士課程の科目を履修し、5年間で学士と修士号を取得できる制度を拡充する大学も増えた。そうした制度も活用し、社会人1年目を大企業ではなく、ITスタートアップ企業や海外のコンサルティング・ファームなどで迎えたいと考える学生は多い。若年層の価値観の変化に照らし合わせると、春季に国内の多くの企業が一斉に、一括で新卒採用を進めることは有効ではなくなった。

年功序列の制度も限界にきている。そもそも、入社以降の年次を重ねるにつれ資格が高まる人事制度で、人々の能力が高まる保証はない。むしろ、新しいことに挑戦するなどのリスクを取らず、従来の業務を行うことがマイナス評価を避けるために有効になってしまう。