文末の句点「。」に恐怖感や威圧感を覚える「マルハラスメント」
実は若い世代の中にもチャットの使い方で迷っている人もいる。人材サービス会社の広報担当の26歳の女性はこう語る。
「『チームズ』のチャットには、チャットグループの人に連絡するときに相手の名前か、フルネームが表示される。そのまま名前を呼び捨てにして通知するのか、あるいは名前に「さん」と入力して通知するべきか迷ってしまう。また、絵文字や顔文字もたくさん出てくるが、先輩社員や上司など、相手によって使ってよいものか考えてしまう」
会社が公認しているLINEや「チームズ」「Slack」に搭載されている機能である以上、使い分けをどうするのか、会社としてガイドライン的なものをつくったほうがトラブルの予防にもなるだろう。
こうした中でLINEなどの文末の句点(。)に恐怖感や威圧感を覚える「マルハラスメント」という言葉が若い世代の中で生まれている。
LINEを使う若い世代は句点をつけることはほとんどない。しかし一定以上の年齢の人にとっては文章の末尾に句点をつけるのは常識となっている。なぜ怖いのか。聞けば、「とくに理由はなく、とにかく怖い」と口をそろえる。
前出の人材サービス会社の女性は「なんか相手が怒っているように感じる。こちらが相手の気に障るようなことをしてしまい、不機嫌なのかと思ってしまう」と語る。
彼女だけではない。飲食店を経営する40代の店長が実際にあった経験を語ってくれた。
「アルバイトとの連絡にはLINEを使うこともある。ある夜、バイトの学生に店を任せて外出したことがある。翌日、店にくると厨房の灯りがついたままになっていた。『電気を消すのを忘れていましたよ。』と、LINEで送ったら次の日から店に来なくなった。既読になったまま返事も寄こさないでそのまま辞めてしまった」
店長は「今にして思えば、マルハラと受け取られたのかもしれない。若い子はマルをつけたら冷たいとか、プレッシャーに感じるらしく、今はつけないようにしている」と語る。
では、マルハラと意識する年齢と、そうでない年齢の境界はどのへんにあるのか。29歳の出版取次会社の営業職の男性は「マルをつけたらプレッシャーを感じるという感覚はない。メールやLINEにしても文章にはマルをつけないといけないという気持ちがある。LINEは同期や後輩にはつけないが、先輩や上司にはマルをつけるようにしている」と語る。
同じ20代でも前出の26歳の女性とではマルに対する感覚が異なる。違いがあるとすれば、女性が1990年代後半に生まれたいわゆるZ世代で、営業職の男性は1994年生まれのミレニアル世代であることだ。