「これでみんなとお別れだな」

選手たちは新横浜駅北口に設置された特設会場で2000人ものサポーターに向けて報告会を行った。その後、新横浜プリンスホテルでビール掛けを行っている。1000本のビールがすぐに空き、200本追加された。別室に移動して祝勝会は続いた。そこには全日空スポーツの山田、中西たちは呼ばれていない。

選手会長の前田の周りには人が絶えなかった。

「ぼくは妻と息子と行きました。もう終わりですねという感じで、一人一人に挨拶しました。楢﨑はお父さん、お母さんを連れてきていました。選手会長の前田浩二さんです、大変お世話になりましたとぼくのことを紹介したんです。そのとき涙をこらえることができなかった。

ぼくは最後まで残っていましたね。みんな名残惜しかったんでしょう、なかなか帰りませんでしたね。帰り際、ゲルト(・エンゲルス)がいつか飲んでくださいと言いながら、ワインを手渡していました」

田崎健太『横浜フリューゲルスはなぜ消滅しなければならなかったのか』
田崎健太『横浜フリューゲルスはなぜ消滅しなければならなかったのか』

エンゲルスは、銘柄は分からないけど結構高いワインを選んだと思うと笑った。監督として何かみんなのためにやらなきゃならないと思って人数分、買ってきてもらったんだと付け加えた。

山口はこう振り返る。

「これでみんなとお別れだなって挨拶した。一人、二人と帰って行った。ぼくは最後までいた気がする。サンパイオも残っていたんじゃないかな」

フリューゲルス最後の夜はこうして幕が下りた。

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