医師の父親と早稲田大を目指した子との確執
特に地方在住、あるいは地方出身の保護者に散見される価値観だが、価値観の相違は一朝一夕には埋められない。
教え子の例で言えば、前者は、国立大学医学部出身の医師の父親との間で、早稲田という私立の、しかも文系学部を総合型選抜入試という得体の知れない制度で受験することについて合意が得られず、受験はしたものの悪い結果で終わった。その後、奮起して一般入試に切り替え、早稲田の学生にはなれたが、父親への不信感は払拭されていない。
後者のケースも、国立大学出身で大手新聞社勤務の父親と、同じく国立大学出身の母親からともに反対された子どもは、望みどおり、旧一期校の千葉大学へと進学した。大手商社志望の本人は、「慶應なら有利だったのに」と語る。
このように、保護者の価値観は、大学入学後にも影響を与えるので、先にまとめたような「進路リテラシー」を持つことは重要になる。
入学後のアドバンテージは地方より都会
保護者に持っていただきたい「進路リテラシー」で、もう一つつけ加えるなら、「大学は大学キャンパス内だけが学びの場ではない」という点だ。
地元の大学へ進み、公務員や教員、あるいは地元の企業や団体で働きたいというケースを除けば、大都市圏の大学に通ったほうが、有形無形の財産を得やすい。
在京メディアに籍を置く筆者は、仕事柄、地方の放送局や新聞社の人たちと話をする機会が多い。彼(彼女)らの中には、在京キー局や大手新聞社にもいないような優秀な人材も大勢いるのだが、会話の内容のスケールが小さい。
普段から、国政や国際情勢を取材したり、著名な文化人や芸能人とつき合いがあるディレクターや記者と、県議会や市議会取材、ローカルタレントとの接点が中心の地方局や地方紙のディレクターや記者とでは、長い年月を経れば、視野の広さ、視点の面白さが違ってくると感じてきた。