大谷翔平のCM継続は正しかった

交通事故の例に話を戻すと、広告に起用されているタレントが交通事故を起こしたが、運転していたのは友人だったという場合はどうだろう?

その友人が飲酒をしていた疑惑がある場合は?

友人の飲酒を知っていた可能性がある場合は?

そもそも、友人が運転していたという事実は間違いがないのか?

事実がどうであるかによって判断は異なってくる。しかし、真実は明らかになっていない。現在の大谷選手の状況も、これに似ているといえる。

以上で見てきたように、広告起用を継続する/しないの判断は、複数の要素が相互に絡み合っているので、個々の案件の事情を踏まえて総合的に判断するしかない。

では、大谷選手の場合はどうなるのだろうか?

結論から言えば、現時点で大谷選手の広告を取り下げる必要はないし、取り下げたほうがリスクは高いので、継続のは妥当な選択であったと言える。また、大谷選手の3月26日の声明発表は、大谷選手を起用している企業に安心材料を与えたと思う。

松本人志、成田悠輔はスポンサー自粛、降板

企業のコンプライアンス意識が高まる近年、広告に起用されるタレントにも素行の良さがより厳しく求められている。加えて、昨年にジャニー喜多川氏の性加害問題が社会問題になって以降、疑惑の段階で広告が下げられるという現象も見られるようになった。

松本人志氏の性加害疑惑において、早々にテレビ番組のスポンサーがスポンサー表示を自粛した。また、キリンビール「氷結」の広告に起用されている経済学者・成田悠輔氏が過去の「不適切発言」を掘り起こされて批判が起き、広告が取り下げになった。こうしたことは、数年前であれば起きなかったのではないかと思う。

そうした状況にはあるが、水原一平氏の発言と、大谷選手の声明は矛盾するものではない。まだ明らかにはなっていないことが多々あるとはいえ、大谷選手は捜査に全面的に協力するという発言もしている。

大谷選手はスーパースターであるだけでなく、スキャンダルもほとんどなく、品行方正であるというイメージも強い。名門ドジャースに移籍し、結婚報告もあって祝賀ムードの最中にあった。そうした中での問題発覚は衝撃も大きかったのだが、現時点では大谷選手のイメージを崩すまでには至っていない。

メディアやネットでの論調を見ていても、多様な意見はあれど、「大谷選手は清廉潔白だ」「大谷選手の声明の内容は正しい」とする(あるいはそう思いたい)意見が大勢を占めている。加えて、大谷選手に対して「この問題に手を煩わせることなく、野球に集中してほしい」という思いも強い。

企業側としても「疑問は残るが、大谷選手を信用して広告起用は継続して様子を見よう」という判断を下しているのだろうし、取り下げることで批判を浴びるリスクも重々に承知しているものと思われる。