広告契約の継続/打ち切りの基準は 「属人的」
まずは、一般的な視点から説明しておきたい。広告に起用している人物にある問題が起きた時、複数の要素を検討して総合的に判断する。しかしながら、それぞれの検討要素について、明確な判断基準があるわけではない。
起用されるタレントやアスリートは一人の人間(グループのこともあるが)であるし、広告を見て影響を受けるのも人である。人が主体になるだけに、判断基準も非常に“属人的”なものにならざるを得ない。
主な検討要素として、下記のようなものが挙げられる。
- 1. 起用されているタレントやアスリートの人気やイメージ
- 2. 起きた問題の重要性、深刻さ
- 3. 起きた問題の企業、商品への影響(イメージや売り上げ等)
- 4. 広告主(スポンサー)の意識や意向
- 5. 広告の対象となる業界、企業、商品・サービスの特性
- 6. 商品やサービス、あるいは広告メッセージと、起用されているタレントやアスリートとの相性や親和性
- 7. 契約金や契約条件
「誰が起こしたか」によって判断は異なる
同じ問題を起こしたとしても、「誰が起こしたか?」によって判断は異なる。
例えば、同じ不倫でも、若い女性アイドルが起こしたら取り下げになるが、高齢の男性タレントなら取り下げにならないということもある。一見すると公正でないように思えるが、ファンや視聴者に与える印象という点からみると、合理的な判断をしているとも言える。
もちろん、起きた問題の大きさや内容も重要だ。
交通事故を起こしたケースについて考えてみよう。
事故の大きさはどの程度か、被害者はいるのか、いるとすると被害の大きさはどのくらいなのか――といったことによって、判断は左右される。
どの業界、どの企業、どの商品の広告に出ているのかといったことも重要だ。一般的に、官公庁や自治体、育児・教育関連、インフラ系などの公共性の高い事業者は、不祥事に厳しい傾向にある。
起きた問題と、広告している企業、商品・サービス、広告メッセージとの関係も重要だ。
例えば、自動車メーカーの広告に出ているタレントが自動車事故を起こしたといった場合は、問題になりやすい。
市川猿之助氏が両親への自殺幇助の容疑で逮捕された際には、彼が起用された警察庁の「親を想う気持ちが、詐欺を防ぐ」というキャッチコピーの広告が(悪い意味で)話題になってしまった。市川猿之助氏の件は、問答無用で広告は取り下げになるレベルの辞退だったが、広告で発信しているメッセージと矛盾するような行為を起こされると、不祥事が軽微だったとしても取り下げになりやすくなる。