ペーサーを抜いてはいけない決まりはない
西山以外からも「前半が遅かった」という声は上がったが、誰もアクションを起こすことはなかった。ペーサーに声をかける、もしくは前に出て、ジェスチャーを送ることで、外国人ペーサーのスピードを上げさせることはできただろう。
新谷の場合は、ペーサーが日本人男子だった。スタート前に、「予定通りにお願いしますね」と念押ししたり、レース中に直接交渉したりするのは可能だったはずだ。
ペースメーカーはあくまで目安であり、抜いてはいけない決まりはない。これもSNSの議論で抜けていたかもしれないポイントだった。
1月の大阪国際女子では前田穂南(天満屋)が21km過ぎでペーサーの前に出て、日本記録につなげた。また2018年のベルリンでは、3人のペーサーが超高速レースに対応できず、15km過ぎから次々と脱落。25.7kmから独走するかたちになったエリウド・キプチョゲ(ケニア)が2時間01分39秒の世界記録(当時)を樹立している。
東京マラソンで狙った記録に届かなかったのは、選手の実力不足に加えて、ペーサー任せのレースをしたことが原因だ。今回、涙を流した選手たちには、もっと実力をつけて、大胆にターゲットを目指すレースを期待したい。