「美しい顔」と「魅力的な顔」は違う
――自分の顔を認識するときに、脳ではどのようなことが起きているのでしょうか。
自分の顔を認識したときに、脳はどのように振る舞っているのかを調べてみると、脳の1カ所だけ、他人の顔よりも自分の顔に対して強く活動している領域があることが分かりました。それは、脳幹の一番上にある腹側被蓋野と呼ばれている領域です。自分の顔が表示されると、この領域からドーパミンが分泌されることを、私たちは突き止めました。ドーパミンは快楽物質とも言われています。
意識できないような短い時間でも自分の顔が表示されると注意が向き、ドーパミンが分泌される。脳は自分の顔を見ると、もっともっと注意しろと、ドーパミンを出すわけです。人間が自分の顔をVIP扱いする理由はこのあたりにありそうです。
――顔に強く関心を持っている人間にとって、「美しい顔」あるいは「魅力的な顔」には、どのような特徴があるのでしょうか。
美しいと感じる顔にはいくつか特徴があるようです。まず、昔から言われているのが、左右対称な顔です。また、シワなどがない、俗に言う「若々しい顔」なども、一般的に美しい顔の条件とされているようです。
ほかにも、多くの顔のデータを重ね合わせて作った「平均顔(平均的な顔)」も、人間は美しいと感じる傾向があるようです。
ただ、魅力的な顔というのはまた少し違っているようです。平均的でなく、左右対称でもない顔を魅力的と感じるのはよくあることです。成功している俳優さんなどを思い浮かべると、分かると思います。例えば平均よりずっと口や鼻が大きかったり、目が切れ長だったり、左右非対称であったり、そうした顔のほうが印象に残りやすいのかもしれません。
写真加工や整形にハマってしまうのはなぜか
――アプリを利用した顔の加工や、美容整形などが流行しています。このことと、自分の顔をVIP扱いすることはどのような関係があるのでしょうか。
これはセルフ・アドバンテージというよりは、セルフ・エヴァリュエート(自己評価)とか、セルフ・エスティーム(自己尊重)といった感情だと思います。
写真のデジタル化やインターネットの普及の影響もあってか、自己そのものをよりポジティブに捉えたいと考える人が増えています。もっと“いいね”がもらいたい。もっとキレイ、かっこいいと言われたい。そのために、自分の顔写真をアプリで加工するわけです。
――加工のしすぎで不自然な見た目になってしまう場合もあります。なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
どうやら自分が“いいな”と感じる加工と、他人から見て“いいな”と感じる加工にはギャップがあるようです。