SNSなどで「境界知能」という用語がたびたび使われている。これはどういう言葉なのだろうか。昭和大学発達障害医療研究所の太田晴久所長は「精神医療のなかでは境界知能は困っている当事者を支援するための言葉で、SNSでの使われ方には違和感がある」という。ジャーナリストの末並俊司さんがリポートする――。
壁に手をついている男性
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SNSで話題になった「境界知能」

「境界知能」という言葉がSNSで話題だ。例えば、経済学者の池田信夫氏はX(旧Twitter)で次のように発言している。

「山本太郎を支持するツイートが意外に多い。彼らは批判を意に介さない。れいわの支持者はIQ85以下の境界知能なので、彼らに受ける派手なパフォーマンスをする。境界知能は14%いるので、政権は取れないが議席は取れる。賢いマーケティングだ。」

このポストには1万9000件以上の“いいね”が集まっている。

一方で、脳学者の茂木健一郎氏はXで「ネット上で意見の対立があって、その一部の要因が「境界知能」と呼ばれることにあるように見えたとしても、それも人間界の多様性の一つとしておおらかに受け止めたらいいのではないかと思う」とSNS上での「境界知能」の使われ方に苦言を呈した。

また、自身のYouTubeチャンネルに寄せられた「境界知能という言葉は、低学歴という言葉に極めて近い言葉だと私は考えています」という質問に対しても「僕はそもそも境界知能と呼ばれる事象に興味がない。境界知能が疑われる人たちから絡まれることで迷惑を受けている人もいるようだが、僕はそういう人たちがなにか書いてきても無視している」という趣旨の回答をしている

「境界知能」という言葉をめぐってさまざまな議論が起きているが、SNS上でのそうした広がりに、警鐘を鳴らすのは昭和大学発達障害医療研究所、所長(准教授)の太田晴久氏だ。

「社会で、生きにくさを感じていらっしゃる方のなかには、知能指数の数値が一定程度低いケースも見られます。医学的な専門用語ではないものの、診断の一環としてわれわれ医師が“境界知能”という言葉を使うことはあります。ただし、その数値は、あくまでも本人が感じている生きにくさの原因を探っていくなかでの、ひとつの手がかりに過ぎません。知能指数の高低は、その方の価値観の正しさや人間性を表すものではないのです」