結局、受信料問題は置き去りにされた

民間放送の代表である民放連はどうかというと、今回の法改正に関しては「民放のネット配信には放送法上の規律がなく、変更がない旨を明記」するよう求めただけである。これに対して総務省が「インターネット上で配信する放送番組については、番組準則のような法律上の規制は課さず、NHKを含む放送事業者における自主的な判断に委ねられるべきと考えており、そのことは明らか」というと、あっさり引き下がった。

番組を制作しているキー局は、これまでの放送の広告収入に加え、番組コンテンツを2次利用したり、NetflixやU-NEXTに販売したりすることで利益を上げており、今回の放送法改正で不利益を受けるわけではない。

新聞協会も民放連も、NHKがネット配信を必須業務にするという議論が進行していたときは、「受信料のことを置き去りにしている」と批判したが、結局、それで困るのは自分たちではないので、口をつぐんでしまった。

暴走を止めるには若い世代の監視が必要

したがって、NHKを次のステップ、すなわち「ネット配信も必須業務になったのだから、その必須業務で配信する番組を受信できる設備(スマホ、タブレット、パソコン、チューナーレステレビ)を持つ人から受信料を取ることができる、なぜなら受信料は番組を見る、見ないに関係なく、必須業務を行うNHKの維持費なのだから」に進ませないためには、国民、とくに受信設備を持たない若い世代の監視が必要だ。

『NHK受信料の研究』および数々の雑誌記事、ネット記事で筆者が書いてきた通り、受信料の正体は、テレビ放送のためのマイクロ波通信網の建設・維持費だ。もはや放送の時代は終わり、ネット配信の時代なのだから、NHKは放送からネットに移ればいい。

その際は、放送ネットワークの建設・維持費である受信料は徴収できなくなる。そうなったら、徹底的に規模縮小して、諸外国の公共放送がそうしているように、広告費でやっていけばいい。

使わなくなったNHKの電波は、すべて返上し、それを総務省がオークションにかければ、数千億円を国庫に入れることができる。それを少子化予算や防衛予算にまわせばいい。

アメリカは、早くも1994年に電波オークションを始め、その収益で国庫を潤している。BBCの許可料(受信料にあたる)廃止の方向に動いているイギリスも、2000年に電波オークションを始めている。わが国も続くべきだ。

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