放送法を操れば「スマホ受信料」は実現する

もちろん、これはNHK側の理屈だ。必須業務としようとしまいと、前述の放送法第六十四条により、放送を受信できる設備を持たない人は、NHKと契約する義務がなく、したがって受信料を支払う義務はない。

渋谷、東京、2016年12月19日 NHK
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だが、放送法第二条の1では、放送とは、「公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信をいう」と規定されている。その電気通信は、電気通信事業法二条の1では、「電気通信 有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けること」とされている。つまり、理屈の上では、放送も有線のネット配信も「電気通信」だということになる。

そこで、第一歩として、放送だけでなく、有線の電気通信であるネット配信も必須業務とし、次のステップで、必須業務になったから、NHKの維持費である受信料を取れると法改正するのではないか。

考えすぎだという人には「ではなぜ、わざわざネット配信を必須業務と変えたのか」と尋ねたい。受信者にとっては何の意味も必要性もないではないか。

若者たちがテレビを持たない本当の理由

NHK・総務省はその意味と必要性をこうこじつけている。「とくにSNSやYouTubeではデマ、ウソ、誹謗ひぼう中傷がはびこっていて、ユーザーは誤った情報を与えられ、歪んだ思想を持つようになっているので、これを是正するためにも、テレビを持たない人びとにも公共放送を届ける必要がある」

これはとんでもないたわごとだ。「テレビを持たない人」とされている人びとの中には、NHK受信料の支払いを忌避するために、わざわざチューナーレステレビを買っている人がいる。現在、家電量販店ばかりでなくケータイショップまでチューナーレステレビを販売している。

若者、とくに生まれたときからインターネットやケータイがあったZ世代は、NHKの番組だけでなく、そもそもテレビを見る習慣がない。彼らはスマホで、SNSを使い、YouTubeを視聴し、ゲームを楽しんでいる。

民間放送の番組ならタダだからいい。見逃した番組があったら、これもまた無料のTVerなどで見逃し視聴すればいい。受信料など払いたくないし、それがNHKの番組ともなれば、なおさらだ。

つまり、若者は、「テレビを持っていない」のではなく「NHK受信料を払わないために持たない」のだ。このような若者に「公共放送」(そんなものではないことはこれまで拙著『NHK受信料の研究』や何本ものネット記事で明らかにしてきた)を届けたいといっても、それは無理というものだ。