スポーツコンテンツのサブスクリプションを提供する「DAZN(ダゾーン)」が3年連続で月額の値上げを発表し、一時期話題となった。だが現在では受け入れられ、批判の声は少ない。桜美林大学の西山守准教授は「小幅な値上げにとどまる年間契約を設定したのに加え、DAZNのスポーツコンテンツ自体が『応援消費』であることが、炎上が比較的小規模に落ち着いた理由だろう」という――。
2022年5月8日、アイントラハト・フランクフルト対ボルシア・メンヒェングラートバッハ戦の写真を編集部が一部加工
2022年5月8日、アイントラハト・フランクフルト対ボルシア・メンヒェングラートバッハ戦の写真を編集部で一部加工(写真=Sven Mandel/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

強気の値上げを繰り返すDAZN

スポーツ専門のビデオ・オン・デマンド・サービス「DAZN(ダゾーン)」がここ数年、値上げを繰り返している。その値上げ幅が、ようやく「値上げ慣れ」してきた消費者の度肝を抜く「強気の値上げ」だとして話題になった。

円安、原材料費の高騰などで、多くの商品、サービスが値上げしている。値上げしても需要は減らず、売り上げや利益を増やしている企業がある反面、減らしている企業もある。

海外の多くの国では、物価が上昇を続けており、消費者もそれを受容している。

2016年に赤城乳業の「ガリガリ君」が10円値上げした際に、米ニューヨークタイムズは1面で同商品の「謝罪広告」を紹介し、日本がデフレを脱却できない現状を説明していた。ガリガリ君の「謝罪広告」は真面目に受け止められることを想定して作られたものではなかったが、値上げを当たり前とするアメリカ人にとっては、値上げを謝罪する日本企業が奇異なものに映ったに違いない。

日本の消費者は概して値上げに敏感で、値上げをした企業に対する風当たりは強い。最近は値上げが常態化しており、消費者は諦めムードに入っているが、食品・飲食系の企業などは、依然として料金は据え置きで容量を減らす「ステルス値上げ」を行って、消費者に値上げを意識させない工夫を行っている。

そうした中で、DAZNの値上げはひときわ目を引いた。DAZNの料金体系は下記の通りだが、2月14日にも値上げを行っている。

DAZNは2016年8月にサービスを開始したが、2022年以降は毎年2月に値上げを行っており、サービス開始時点から2倍以上の値上げになっている。昨今の物価高を考慮しても、値上げ幅は目立って大きいと言える。

【図表】DAZNの料金プラン推移(DAZN Standard)

これまで、価格が据え置かれていた「DAZN for docomo」も3月1日から値上げされ、同サービスを安く利用する「抜け道」も徐々にふさがれつつある。