最新情報に更新されていく「強盗用リスト」

個々の資産状況などは当然、日々変わっている。15年前のものともなると、それはすでに当てにならないと言っていい。しかし、こうしたリストを作る業者は、過去の名簿をベースに、アンケートと称して電話をかけたり、実地調査に赴くなどして、そのリストを更新していくのだという。時にはカード会社や銀行からの流出データを紐付けることもある。

その動きがここ2、3年活発になっていた。それも福島、宮城が圧倒的に多かったという。当初は、特殊詐欺のためのリスト更新だったが、それが2021年末ごろから防犯カメラの位置なども付記された「強盗用リスト」に転じていったという。

なぜこの地域のリストの更新が活発なのか、その理由は想像どおりだった。

ターゲットは被災地に流れ込んだ巨額のカネ

「大量に入った震災の復興マネーがダブついていることに気づいたんだろう」

2011年の東日本大震災以降、復興予算として政府が組んだ予算は10年間で32兆円。さらに東京電力による賠償金なども含めると、確かに巨額のカネが被災地に流れ込んでいた。ここ数年そうした資金に群がるように、詐欺事件が頻発していたことは感じていた。しかし、なぜ「詐欺リスト」が転じて「強盗リスト」となったのか。名簿屋は話す。

家の外の人影のイメージ
写真=iStock.com/ricardoreitmeyer
※写真はイメージです

「今さらオレオレ(詐欺)とかやったところで、昔に比べたらアガり(儲け)は少ないからね。今では高齢者も警戒しているし。それゆえ投資詐欺がはやったんだけど、頭を使うその手の詐欺は手間ひまがかかる。バカにはできない仕事なんだよ。そうした「投資詐欺用リスト」を買う組織は限られている。しかし、強盗用に情報をバージョンアップしたリストを作ったら売れた。タタキ(強盗)のような、荒っぽい仕事をやっている連中が軒並み買っていったんだ」

こうしたリストは一件につき「牛丼一杯分の値段」で売られるという。1万人分集まれば、それを複数の組織が買うと考えたら、リストを作る業者が手間ひまかけるのもうなずける。闇リストを作る業者、販売する業者のほかにも、偽造免許証や架空名義で契約された「飛ばし携帯」業者、裏の人材派遣業者まであり、ひとつの産業構造を成しているのだ。そしてそれぞれの業者間で、競争原理が働くこともある。