母親の孤立化を防ぐべき
「0〜2歳はエネルギーの塊で、成人の3年間とはわけが違う」という話も出てきましたが、だからこそ母親だけが育児を担うのは大変です。元教育委員長の方も「育児をするのは母親に限らず、父親でもおばあちゃんおじいちゃんでも信頼のある関係の中で育つのならいい」とのことでした。昔の日本では大家族や地域の中で育児が行われていましたが、今は違います。核家族で母親だけのワンオペ育児が多いのです。
国立成育医療研究センターの調査によると、出産後1年間の女性の死因は自殺がトップで、産後うつを含めたメンタルヘルスの重要性が大きいことがわかっています(※5)。産後すぐはホルモンバランスが不安定で、心身ともに疲労しているため、女性だけに育児を押し付けないことが大切です。
「保育士による虐待のリスクがあるのに保育所に預けるのか」という意見も出ました。確かに大きな問題です。しかし子どもの虐待は、保育所よりも家庭で起こることのほうが多いのです。こども家庭庁の調査によると、2022年4〜12月の保育所全体の虐待件数は122件、2022年度の家庭での虐待は約22万件です。調査期間などの条件は違うのですが、いずれにしても圧倒的に家庭のほうが多いですね。エネルギーの塊である子どもをワンオペあるいは閉鎖的な家庭で母親一人が育てるよりも、第三者の目が入る保育所はむしろ安全ではないでしょうか。
※5 NHK「知ってほしい“産後のうつ”~92人自殺の衝撃~」
保育士さんと共に育てる利点
さて、時間に限りある生放送で言えたのは、「現代では我が子を生んで初めて赤ちゃんの世話をする母親・父親が多く、子どもがどうであれば健康なのか、通常の成長・発達はどういうものなのかを知らない人が多い。そんな中、0歳から保育士さんにみてもらいながら一緒に育てていくことはいいことだ」ということでした。
現代の日本は核家族が多く、しかも男性の長時間労働は改善されていません。結果的に、子どもを産んだ途端、まったく初めての経験なのに、お母さんだけが子どものすべてに責任を負わなくてはいけなくなります。これは大変なことで、SNSなどで心身ともに疲弊していることを発信するお母さんは少なくありません。
まして経済的に困っていたり、シングルだったり、配偶者がいても子育てできなかったりした場合、保育所を利用しないほうが子どもを含め家庭全体にとってよくないでしょう。母親だけが3年間も一人で子育てをするのは、どう考えてもいい状況とは思えません。心身の健康や仕事、お金などを失うリスクも考えられます。子育て支援センターなどに通えばいいというものでもないのです。