家電量販大手の業績が急降下している。
ピーク時に年間2兆円超を売り上げ、専門店業態で最強を誇るヤマダ電機ですらも苦悶する有り様で、2012年9月中間連結決算の最終利益は、前年同期比65.9%減の139億円に落ち込んだ。業界第2位のエディオンの最終損益に至っては11億円の赤字(前年同期は109億円の黒字)と、9月中間としては02年の設立以来初の赤字転落である。
昨年7月の地上デジタル放送への移行完了までに、「4年分のテレビ買い替え需要が出てしまった」(岡本潤・ヤマダ電機副社長)先食いの反動で、深刻なテレビ販売の不振に見舞われたのが主因だ。
先行きは厳しい。スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット型多機能端末の販売は好調だが、「テレビ不況」の穴を埋めるまでには至らず、「売るもの」のない土砂降り状態から抜け出せそうもない。このため、ヤマダ電機、エディオン、ケーズホールディングスの上位3社は、そろって13年3月期通期の業績見通しについて下方修正を余儀なくされた。
足元のテレビ不況に加え、国内景気はすでに後退局面に入ったとされ、国内家電市場の縮小は避けられない。となれば、勢い成長の伸びしろがある海外に目が向く。ヤマダ電機がその典型で、現在3店舗を展開する中国に加え、東南アジアでの事業展開を模索する。
しかし、中国事業は沖縄県の尖閣諸島を巡る日中関係の悪化から出店計画を見直さざるをえず、東南ア進出も展望が開けない。買収するベスト電器が東南アへの出店実績があり、その活用を想定していたものの、公正取引委員会の審査にめどが立たないからだ。海外事業による活路は、まさに塞がれたも同然だ。
一方でヤマダ電機は、住宅メーカーのエス・バイ・エルや、かつての日立化成工業の住宅設備機器部門のハウステックホールディングスを買収、新規事業として住宅関連領域での事業拡大に注力する。
しかし、体力のある大手ならまだしも、テレビ不況で業界全体が大きく蝕まれたなかで、ビックカメラによるコジマの子会社化、ヤマダ電機のベスト電器買収に続き、またしても再編風が吹き込む可能性は否定できない。家電量販業界は今、まさに再編前夜を迎えつつある。