都市のスキマに設置されるLUUPのポート

筆者の目から見てLUUPがシェアを増やす背景にあるのは「都市のスキマを埋めるポート設置」だ。

電動キックボードや電動自転車が置いてある場所は「ポート」と呼ばれるが、このポートの場所が非常に面白い。例えば、これは以前、筆者がLUUPを使用したときの話である。LUUPでは返却ポートがアプリ上で表示される仕組みになっている。そのアプリによると、もう返却地はすぐそこらしいのだが、どう行ってもそこに辿り着けない。あれやこれや移動しても、なぜか表示されている返却地に正確に辿り着けないのだ。その理由がこれだ。

この道を抜けると
筆者撮影
この道を抜けると

なんと、その返却地、この短い道を抜けたどん詰まりにあるのだ。この道を抜けると、この光景が現れる。狭い住宅街の道を抜けると、そこには何十台もの電動キックボードと電動自転車があるのだ。

電動キックボードや電動自転車が置いてある「ポート」
筆者撮影
電動キックボードや電動自転車が置いてある「ポート」

LUUPを使ったことがある人は、同じような経験をしたことがある人もいるかもしれない。LUUPのポートを探すときはいつも、こうした都市のスキマのような場所を歩くことになる。

往々にして、ポートは街の中の「空きスペース」を利用して作られている。いや、作られているというよりも、「再発見されている」と言ったほうがいいかもしれない。街の中でデッドスペースになっていた場所を、ポートとして再発見するのだ。

LUUPの公式ホームページでは、こうしたポート用の物件を募集していて、その利点の一つとして「デッドスペースの収益化」を挙げている。そこには「自動販売機2台分から設置可能なため、今まで使い道がなかった小さなスペースを有効活用することができます」とあり、こうした「都市のスキマ」を使うことが推奨されているのだ。

空きスペース活用というトレンド

都市論的な観点から言えば、こうした空きスペースを活用して都市の中にさまざまなスペースを作っていく動きは、近年盛んになっている動きだ。

例えば、駅の構内の空きスペースなどで仮設の店舗であるポップアップストアを開くことなどが流行しているが、これもこうした流れを受けてのものであろう(ちなみに、筆者は以前、プレジデントオンラインでこのポップアップストアについて書いたので、興味がある人はそちらも参照してみてほしい)。

LUUP側としては、手軽にポートを増やすことができるし、設置側としては自宅や所有地の空きスペースを有効活用できる。また、利用者にとってみても、自宅の近くに多くのポートができることによって利便性が向上するのだから、さまざまな方向でいいことずくめである。

また、少し古い文献にはなるが、槇文彦『見えがくれする都市』(鹿島出版会、1980年)では、日本の都市空間に「すき間」が多いことが述べられている。もともと、日本の都市はこうした「スキマ」空間を活用しやすいもしれない。

いずれにしても、こうしたトレンドに乗って、ポート数は増えていくのだろうのかもしれない。