免許不要の電動キックボードのシェアリングサービスを導入する自治体や企業、店舗が増えている。環境負荷の低い新しい近距離移動手段としても注目されている一方、利用者の事故や交通・ルール違反も多く報告されるなど課題も多い。ライターの谷頭和希さんが、利用者が大きく拡大している背景を都市論の観点から解説する――。
電動キックボードで出勤するビジネスマン
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電動キックボード・電動自転車のシェアリングサービスを展開するLUUP(本社:東京地千代田区)が、2月23日から3月24日までの期間限定で、埼玉県・飯能でのライドシェアリングの実証実験を始めた。

これは、2月23日(金)から3月3日(日)に開催される移住促進イベント「はんのう Yellow Week~早春の飯能をめぐる10日間~」に合わせて実施されたもので、飯能市が支援をしている。

国内で稼働している電動キックボードのシェアリングサービスはいくつかあるが、日本での最大手がこの、LUUPだ。

シェアを拡大するLUUP

LUUPは現在、国内8都市で運用され、2025年までには全国1万箇所にポート(電動キックボードや電動自転車が置いてある場所のこと)を増やす見込みだという。昨年の7月には運転にあたっての免許が不要となり、それによる利用者の増加も見込まれている。

LUUPが創業したのは2018年。シェアリングサービスを始めたのは2020年5月、コロナ禍真っ只中であった。当初は電動自転車のシェアリングサービスのみだったが、2021年には電動キックボードのシェアリングサービスを始める。その後、さまざまな都市で実証実験を繰り返し、現在に至っている。

料金体系は2024年3月1日に改定され、改定後は「基本料金50円+1分15円」。これは2023年11月以前の料金体系と同じで、現行では「30分200円」となっているのだが、短時間利用の利便性を考えて、元に戻される形だ。

一方、サービス拡充に伴って事故の件数も増加。手軽なだけに交通ルールを無視する利用者も多いことから、その安全性への指摘が後を絶たない状態だ。LUUPも利用前に交通安全のためのチェックテストを行うなど、いくつかの対策は行っているが、まだまだ安全面への懸念は強い。フランスのように、電動キックボードを日本よりも早く取り入れたものの、安全面の問題からその運用に大きな規制をかけた国もある。

さまざまな論点のある電動キックボードであるが、日本でその利用が大きく拡大している背景、そして今後の展望を、筆者が専門とする都市論の観点から見ていきたい。