叱れば叱るほど部下はダメになる
「北風と太陽」という寓話で北風が強くなると服をさらに着込んでしまうように、叱れば叱るほど、その反発(心理的リアクタンス)は大きくなり、部下は頑なに自分の意識や行動を変えようとしなくなります。
または、何度も叱られたローパフォーマーのなかには反発する気力自体も失い、意欲が減退してしまっていて、叱っても暖簾に腕押し状態の人もいます。これは「学習性無力感」という状態です。
「どうせ自分はいつも叱られる」「この上司には何を言っても無駄だ」「自分の意志は尊重されない」という経験が積み重なると、部下は積極的な行動をしない指示待ちになっていきます。一方的に部下を叱れば叱るほど、反発したり、無反応だったりする部下の意識や行動は前向きに変化するどころか、その状態が反復強化されるリスクがあります。
ただの叱責で終わらないための方法論
それではどうしたら効果的に北風を吹かせることができるのでしょうか。その方法が、ネガティブフィードバックです。部下に「その行動をくり返してもらったら困る」「その考え方や行動を変えてもらいたい」と改善を促すという目的は「叱る」と同じでも、「叱る」が一方的な指示なのに対し、ネガティブフィードバックは上司と部下の双方向の合意を目指すコミュニケーションを前提としています。
つまり、上司が部下に「伝える」だけでなく、部下も上司に「伝える」、そのうえで双方が相手の意見を「聴く」。そして、上司と部下が一緒になって改善策を考える。部下も自分で意見を考えて発信するからこそ、「リフレクション(内省)」が生まれ、部下の意識や行動の変化につながるのです。