双方にプラスになるフィードバックの方法

どれもこれも、部下としては聞かずに済むなら聞きたくない話でしょう。上司としても、言わなくて済むなら言いたくないのが正直なところでしょう。この「部下は聞きたくない、上司は言いたくない」葛藤状態を解決し、「上司が部下に厳しいことを伝える」「部下も上司と納得できるまで話し合う」双方向のコミュニケーションが、ネガティブフィードバックです。

テニスでラリーをするイメージ
写真=iStock.com/valentinrussanov
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上司が単に厳しいことを言うだけでは、部下側の反発を呼びパワハラやメンタルダウンなどのトラブルの原因になりかねません。また、部下側も納得していない上司の叱責しっせきを適当にやり過ごすだけでは、自身の成長も阻害され、組織内でのキャリアにマイナスの影響が出ます。

精神論で「厳しいことを言おう」というつもりはありません。『ネガティブフィードバック「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術』では、コミュニケーション理論・リーダーシップ理論・キャリア理論・心理学・脳科学などをベースに具体例も交えて解説しています。

なぜ部下を「叱る」だけでは効果がないのか

厳しいことを伝えるネガティブフィードバックと対照的な方法が、部下マネジメントのトレンドになっている、「温かいアプローチ」です。相手に寄り添う、相手の話をちゃんと聞いてあげる、相手の言い分を受け止めてあげる、答えは相手の中にある、出来なかった事より出来た事に目を向ける、その人らしさを認める、否定せず勇気づける、ありのままを受け入れる……。

コーチング・カウンセリング・心理的安全性・自己肯定感・マインドフルネス・ポジティブ心理学・サーバントリーダーシップなど、肯定的で温かいアプローチのほうが部下にとっても上司にとっても受け入れやすいため、素直に耳を傾けてくれますし、その効果や価値を否定する気はありません。私自身も、人事コンサルティングや研修の現場でこうした肯定的なアプローチを使う場面は多いです。