日本独自のビジネスモデルが注目されている
2つ目は、自動車だ。ゴールドマンはわが国最大企業であり、1990年代以降の日本経済を支えたトヨタグループ(トヨタとスバル)を選んだ。現在の日本経済の牽引役という点で、自動車は重要とみたのだろう。
ただ、わが国の自動車メーカーに関しては不透明な部分もある。近年、トヨタは中国BYDや米テスラによるEVシフトに遅れた。中長期的に主要先進国でEVシフトは加速する可能性が高い。“全方位型(エンジン車、HV、PHV、EV、FCV)”の事業戦略をとるトヨタがグループ全体でEVシフトにどう対応するか、今後の課題の面もありそうだ。
3つ目の総合商社は、わが国独自のビジネスモデルである。三菱商事は脱炭素やデジタル化など、成長期待の高い分野で収益源を拡充している。それは、これから収益力の向上につながることが期待できる。
成長期待が高い産業は「セブン・サムライ」以外にも
3つの分野以外にも、わが国には中長期的な成長が期待できる分野がある。これから、先端分野での米中の対立、台湾問題の緊迫化など複合的な要因が顕在化する可能性が高い。それは、ある意味で、わが国半導体産業の重要性が高まることを意味する。日本半導体産業復活の可能性は高まった。
また、わが国の企業が持つ強みを発揮できる分野がある。その代表は、超高純度(限りなく不純物が少ない)の半導体関連部材だ。主な製品にシリコン・ウエハー(半導体の基板)、回路形成の材料であるフォトレジスト(感光性材料)、基盤を磨くための研磨剤などがある。
製造したチップをケースに封入するプロセス(半導体の後工程)でも、封止剤や回路形成のための材料分野で高シェアの企業は多い。半導体の製造には、大量の水も必要だ。超純水(極端に純度の高い水)の精製を行う装置やプラント分野でも、わが国企業の競争力は高い。