Aさんは国家公務員として長年勤務をしている

「年末年始に帰省されましたよね。でも、この状態ではお母様と二人でごはんを食べる場所さえないですよね?」

本音では「母親がこんな汚い場所に住んでいて、あなたは何も思わなかったのか」と聞きたかったのだが、それは失礼な気がして口に出せなかった。

するとAさんは「ありますよ」と、部屋中央にある、ほとんど埋まっていて形が見えないテーブルを指差す。

帰省の際食事をしていたテーブル
筆者撮影
帰省の際食事をしていたテーブル

「ここをどかせば……。今年の正月もそうしましたし」となんてことのないように言う。

帰省の際食事をしていたテーブル
筆者撮影
帰省の際食事をしていたテーブル

後日、Aさんを紹介した医師のもとを私はたずねた。そしてAさんの実家の中の写真を見せて状況を説明すると、医師は「ええっ」と目を見開いた。しばらく黙った後、口を開く。

「仕事が忙しく残業も多いAさんが、急にお母様が亡くなって片付けに困っていて誰かの手助けがほしいということだったので、笹井さんにお願いしたんです。私はあくまで一般的な家を想像していたので、まさか室内がこのような状況だとは思いませんでした」

Aさんは国家公務員として長年勤務しているという。

「亡くなったAさんのお母さんからも盆暮に贈り物をもらっていたので、しっかりした方だと思っていました。ただAさんが発達障害ですので、この室内を見る限り、お母さんもそうだったのかもしれません」

(後編に続く)

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