知識を応用できることが頭のよさ

このように、いまは技術が進んだ分、思いついたことを実現しやすい状況にあります。「知能の持ち腐れ」になることなく、それを活かすための手段は豊富にあるのですから、自分の能力の使い方を考え、そのための勉強をしてみてもいいのではないでしょうか。

認知心理学においては、知識が多いほど「頭がいい」わけではなく、その知識を応用できることが頭のよさであるとされています。

高学歴のお笑い芸人で、知識は豊富なのにそれを応用できず、肝心の芸の面白さがいまひとつという人がいます。応用能力の乏しさという意味においては、彼は「頭がいい」とは言えません。

しかし彼の賢いところは、その応用能力のなさを自覚し、知識の豊富さのほうを売りにしてクイズ番組に出ていることです。

自分の能力を把握し、その使い方がわかっている。つまり「メタ認知」をうまく働かせているということ。そこが彼の「頭のよさ」なのです。

自分を客観的に見つめて、どんな「頭のよさ」を持っているかに気づき、それをどう使うかを考えられることも必要なのです。

「考え方」の多様性を知る

論理的に考えることが得意な人ほど、はまりがちな落とし穴があります。それは「自分の論理が正しい」と思い込んでしまうことです。

知識としての「事実」はひとつでも、それに対する「考え方」は、かなりの数があります。その中でひとつの考え方だけが正しいと思い込むのは、きわめてリスクの高いことです。

ひとつのことに対してひとつのことしか考えない、というのは一見論理的ではありますが、「頭がいい」とは言えません。

それはむしろ「頭が固い」ということです。

ひとつのことに対して、いろいろな考え方ができる人こそが、「頭のいい人」だと私は思っています。

その「頭のよさ」を磨くために私がしているのは、いろいろな人の考え方に触れることです。多様な思考に触れることが、自分の思考パターンを広げてくれます。

たとえばある事件について、ジャーナリストの池上彰さんが解説するのを聞いて「そうだったのか」とただ納得して終わってはいけません。

その考えに対する反論がないか、少しインターネットで調べるだけでもいろいろな角度からの意見が出てきます。それを踏まえて、「池上さんはこう言っていたけど、こういう説もある」と言えれば、「頭のいい人」だと思われるでしょう。

オフィスでノートパソコンで作業する男性
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

「今日、池上さんがこんなことを言っていたよ」と得意げに受け売りをしているだけでは、子どもと同じです。

大人の勉強とは、知識としてひとつの答えを知るためにするものではありません。「いろいろな考え方がある」ことを知るためにするものなのです。