ハンガリー人の祖先はフン人ではない
パンノニアは現在はハンガリーと呼ばれている。Hungary(ハンガリー)の語源は、「フン人(the Huns)の土地」という説が有力であるが、現在のハンガリー人の祖先はフン人ではなく、9世紀に西進してきたウラル系遊牧騎馬民族のマジャール人である。
マジャール人(the Magyars)の原住地はウラル山脈の南西部であったと考えられている。6世紀頃に黒海北部でブルガール人と接触しながら9世紀にパンノニアの地に入り、10世紀には東フランクをはじめとする西ヨーロッパへの略奪遠征を繰り返すも、955年に東フランク・ザクセン朝のハインリヒ1世の子オットー1世とのレヒフェルトの戦いに破れ、パンノニアに戻ることを余儀なくされる。
その後、1000年に、イシュトヴァン1世の時にハンガリー王国を成立させる。
ちなみに、ヨーロッパの国でインド・ヨーロッパ語族に属さない言語にはハンガリー語、フィンランド語(語源は「湖沼の国」)、エストニア語、バスク語、マルタ語などがある。
ブルガリアは「ボルガ川から来た人」
なお、ブルガール人は黒海とカスピ海の間に横たわるコーカサス山脈北部の草原地域に暮らすトルコ系の遊牧民であったが、4世紀後半頃、フン人に圧迫されて西に追われ、7世紀頃に黒海の北岸に国家を建設するも、さらにハザール人に圧迫されてドナウ川を渡り、先住の南スラブ人と同化しながらブルガリア王国を建国する。
これが今日、日本ではヨーグルトで知られるブルガリア共和国の基になる。
Bulgaria(ブルガリア)はラテン語で「ボルガ川から来た人」が語源で、彼らが6世紀頃まで暮らしていたボルガの川岸に由来するという説と、彼らがトルコ系とスラブ系のミックスであることからアルタイ語族に属するチュルク諸語で「混合の」を表すbulgaに由来するという説がある。