「やりたい」と思ってスケートをしていたわけではなかった
それまで長洲さんは、自分で「やりたい!」と思ってやってきたというよりも、やってみたら上手にできてしまって、まるでベルトコンベアに乗っているように「やりたいというより、やるものだから」という感覚で進んできたといいます。そんななかで、やがて両親に反発する態度をとってしまいました。
長洲さんのご両親は「スケートを続けるかどうか、もう自分の好きにしなさい。私たちは練習の送り迎えもしない。続けたいなら勝手にやりなさい」と彼女をあえて突き放したそうです。きっと親としても子どもに自分の人生を託すことは勇気が必要なことだったと思いますし、長洲さんにとってもつらい言葉だったのではないかと思います。
長洲さんはスケートを続けるかどうか逡巡しました。両親の協力なしに続けるとなれば、毎日バスに2時間乗って、コーチのもとに通わなければなりません。彼女は最終的に「2時間かけてコーチのもとに通い、スケートを続ける」という決断を自分で下しました。
そのとき初めて、「私は、スケートがやりたいんだ」という自分の意思に気づいたといいます。自分の選択で、自分の判断で、自分の責任で、というオーナーシップが生まれた瞬間に、これまでとは違ったモチベーションがわいてきたそうです。
「自分で決めたことだからやり遂げよう」と思える
「私は、私の意思でスケートをしている」
そう思えたことで、若くして引退していくスケーターが多いなか、彼女は24歳でトリプルアクセルという大技に挑戦し、オリンピックの大舞台で成功させました。彼女がスケートに対してオーナーシップを持てたことと、長い間、大きなエネルギーと情熱をスケートに注ぎつづけられたことは決して無関係ではないだろうと私は見ています。
自分の意見や選択は、自分自身のもの。
私は、YESと言ってもNOと言ってもいい。
人生の主役は私自身であり、人生のストーリーは私が決められる。
そして、その決断を尊重し、受け入れてくれる人はきっといる。
そう思えることで、目の前に広がる景色は変わってきます。
オーナーシップを持つことで、「自分で決めたことだからやり遂げよう」と力がわいてきますし、その結果がすばらしいものであれば、喜びはさらに大きくなります。反対に、期待した結果が伴わなくても、自分で下した決断であれば納得できるはずです。