子どもは塾で傷つき、親は体力と精神の限界に…

5 思っていたより親子ともに精神的な負担がかかる

5つめの想定外は、思っていたより親子ともに精神的な負担がかかるということです。中学受験は親子の体力だけでなく、精神力も問われます。

これまでお伝えしてきた4点を踏まえて中学受験に踏み出しても、成績はそう簡単に上がるものではないですし、高学年になるにつれて、子どもは親の言うことを聞かなくなってきます。

スタートラインとそれぞれの位置
写真=iStock.com/takasuu
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私は、「こんなにお金をかけて、体力の限界まで子どものサポートに尽くしているのに、当の本人は呑気で、やる気が感じられない……」という相談をよく受けます。

一方、子どもも、日々、塾のクラスメートとの成績競争にさらされて、傷ついていることが少なくありません。そこで、家に帰ってきてから、塾で傷ついたやるせなさを親にぶつけるんですね。

親も体力的、精神的にギリギリなので、余裕を持って受け止められず、「もうそんなこと言うんだったら、やめれば」と言いたくなるのを必死にこらえる。堪えているところに、子どもの受験に関心を示さない夫や妻からあっさり「もうやめれば」などと言われて、やり場のない気持ちにモヤモヤする……そんなご家庭も見てきました。

中学受験をやめるという選択肢も用意しておく

中学受験をめざすことで家族が結束して、家族のみんなそれぞれの充実した毎日につながっているとか、中学、高校、大学生になってから、「中学受験のとき、親がサポートしてくれたのが本当にありがたかった。あのときの経験があるから、今の自分がある」と振り返る中学受験経験者も大勢います。

一方で、本来、必須ではない中学受験勉強というハイレベルな経験を、ハイレベルな環境でしたために「自分は勉強ができない」と思い込んで自己肯定感が下がってしまう子も少なくありません。

受験で全落ちして、地元の公立中に進学して高校受験の塾に入ったものの、授業中、宿題の解説を聞いて、自分の答えが誤りだと気づくとその答えを消しゴムで消し、シャーペンで正解を書き込み赤ペンで丸をする、といったような「間違い恐怖症」になってしまった子なども見てきました。

そこまで追い詰められてしまうことを防ぐために、お子さんの適性やご家庭の状況に合わせて、いつでも方向転換できる選択肢があることを、家族で共有しておくことをおすすめします。