※本稿は、国立国語研究所・編『日本語の大疑問2』(幻冬舎新書)の第3章「文字にまつわるミステリー」の一部を再編集したものです。
学校では習わない括弧の使い方
( )【 】『 』など、いろいろな括弧をどう使いわければよいですか
回答=岩崎拓也
みなさんは、普段どのような括弧を使っていますか。
最初に思いつくのは、かぎ括弧と丸括弧(「パーレン」や、単に「括弧」とも言う)だと思います。かぎ括弧「 」は、1.の例のように文をくくると会話文であることを表します。これは、小学校の国語科の教科書にも書かれているので、みなさんもご存じだと思います。
ですが、次の2.から4.までの例のように、かぎ括弧は会話文以外でもよく使われています。
1.「そんなこと言ったって、しょうがないじゃないか。」
2.岩崎拓也(2016)「中国人・韓国人日本語学習者の作文にみられる句読点の多寡」
3.外国語として日本語を学ぶ人にとって、「は」と「が」の使い分けはとても難しい。
4.私は「乱切り」の蕎麦のほうが好きです。
2.では論文の題名に、3.はメタ的な語(地の文とは異なる、概念的な語の使い方)に、4.では強調したい語に、それぞれかぎ括弧が使用されていると考えられます。このような使い方は、学校では習わないものです。
では、それ以外にどのような括弧があって、どのように使われるのでしょうか。図表1に括弧の種類と名前、括弧のなかで使われやすい内容を簡潔にまとめてみました。
情報を目立たせたいか、目立たせたくないか
これらは、日常的に使われる括弧を取りあげたもので、そのほかにも[ ]や《 》など、場合によってさまざまな括弧の使用が見られます。このように、括弧の種類はさまざまですが、どの括弧を使わなければならないか、というようなルールは存在していません。
つまり、書き手が読み手にわかりやすく示せるように試行錯誤している、というのが現状です。
ですが、括弧の機能を考えてみると、情報を目立たせたいか、目立たせたくないか、ということで使いわけができると思います。