「ロシアに好きなようにやらせる」と発言
ただ、トランプ氏が大統領に返り咲けば、国際社会は言うに及ばず、日本で暮らす私たちにも影響が出てくる。そのキーワードは4つの「見捨てる」だ。
(1)ウクライナを見捨てる
「Make America Great Again」を掲げるトランプ氏は、財政悪化の要因となっているウクライナへの支援を停止、もしくは大幅に縮小するだろう。そうなれば、ウクライナのゼレンスキー大統領は、領土を奪われた状態でロシアとの戦争終結を模索せざるを得なくなる。
その結果、日本の食卓にも関わる小麦などの価格相場はロシアが握ることになる。トランプ氏は、「軍事費の負担を増やさなければ同盟国を守らない。ロシアに好きなようにやらせる」とも語っている。アメリカとヨーロッパの関係悪化は避けられず、日本も外交戦略の練り直しを迫られる。
(2)台湾を見捨てる
トランプ氏は大統領時代、アメリカと台湾の高官が相互に往来できる「台湾旅行法」と台湾への防衛装備品売却や移転を奨励する「台湾保証法」を成立させたが、今年1月20日、FOXテレビのインタビューで、「北京が武力攻撃した場合、台湾を守るかどうか」という質問には答えず、「台湾がアメリカの半導体事業を奪った」と批判している。中国と台湾との間で衝突が生じそうな場合でも、アメリカ軍を動かさないことも考えられる。
当然、日本は独自で防衛力を強化し、有事に備える必要がある。
金のかかる在日米軍をそのままにはしない
(3)日本を見捨てる
在韓米軍約3万人を撤収、もしくは大幅に縮小させ、在日米軍約5万人に関しても駐留経費の増額を求めてくる可能性が高い。
自動車など自国産業を守りたいトランプ氏は、全輸入品に10%の関税をかけ、中国からの全輸入品にも、「中国経済が悪化している今こそ攻めどき」と60%以上の高い関税を課す可能性がある。
この場合、日米韓の関係が揺らぎ、日本の輸出産業がダメージを受け、中国の株価暴落や不動産不況が日本にも悪影響をもたらすリスクが高まる。中国にとっても何をするかわからないトランプ氏が再び厄介な存在になる。
(4)パレスチナを見捨てる
トランプ氏がバイデン政権以上にイスラエル支持を打ち出すのは確実だ。そうなれば、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)の戦争に参戦しやすくなる。中東危機に陥れば、ガソリン価格がさらに上がるだろう。