アメリカ人がトランプ氏の再登板を望む理由
つまり、トランプ氏は、岩盤支持層を固めながら、本来であればヘイリー氏が強いはずの高学歴で高所得の有権者、そして、大統領選挙本番では民主党のバイデン大統領に投票しそうな有権者にも、一定程度、食い込んだことになる。
トランプ氏は、2月24日、ヘイリー氏が知事を務めたサウスカロライナ州の予備選挙でも圧勝すると見られ、そうなれば、各州の予備選挙や党員集会が集中する3月5日のスーパーチューズデーを待たず、「共和党候補はトランプ氏」となる公算が大きい。
今や共和党は、ヘイリー氏の支持者を除き「トランプの党」だ。共和党支持者は、元来、高学歴で高所得層が多い。その中で拡がる「バイデン政権下でアメリカは相対的に弱くなった」との不満、大型減税への期待などが、トランプ氏の支持層を分厚くしている。
91の罪に問われている現役の「被告」だが…
トランプ氏がホワイトハウスを奪還するには、以下の2つのハードルがある。
(1)4つの事件で起訴されている点
「不倫口止め」「機密文書持ち出し」「連邦議会襲撃事件の扇動」「ジョージア州で大統領選挙結果を覆すため集計手続きに介入」の4つの事件で91の罪に問われ、トランプ陣営は、選挙戦と裁判の「両面作戦」を強いられている。
(2)副大統領候補を誰にするかという点
副大統領候補は「ランニングメイト」と呼ばれ、長い選挙戦を戦ううえで重要。大統領候補が弱い州、弱い分野、弱い支持層を埋められる人物を指名する必要がある。
筆者は、トランプ陣営がこれら2つともクリアしつつあると見ている。
上記のうち、(1)でもっとも問題なのは「連邦議会襲撃事件の扇動」だ。すでにコロラド州などでは、トランプ氏は、アメリカ合衆国憲法「修正第14条3項」の規定により、反乱に関わった人物は公職に就けない=大統領選挙に出馬する資格がないとの司法判断が出されている。
しかし、2月8日、アメリカ連邦最高裁判所で開かれた口頭弁論で、判事(9人のうち3人がトランプ政権下で任命された判事)からは、この判断に懐疑的な意見が相次いだ。
それに先がけ、ワシントンにある連邦地方裁判所は、3月4日に予定されていた初公判の日程を無期限延期としている。トランプ陣営からすれば、裁判を大統領選挙後まで遅らせ、それまでに、万一、「クロ」と判断された場合でも、当選すれば、自身が指名する司法長官に起訴を取り下げさせるという形が出来上がりつつあるということだ。