「上司からアドバイス、サポート」なしで辞めたくなる

では実際に入社後はどうなのか。同研究所の「若手社員の意識調査(社会人1年目)2023年」では、入社前に感じていた不安などのギャップは、入社後にどう変わったかを聞いている。それによると「上司とのコミュニケーション」は、「フランクで話しやすい」が30.3%、「厳しく話しにくい」が34.3%となっている(想定通りが35.3%)。

また、「上司からの仕事のアドバイス」は、37.7%が「細やかではない」、「上司への悩み相談」は、42.0%が「細やかに相談できない」、「上司からのスキルアップのサポート」は、37.7%が「サポートしてもらえない」と回答。それぞれ4割近くがネガティブな印象を抱いている。

笑顔を向ける上司と目を合わせずに語る若い社員が面談中
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こうした思いを抱く新人は離職予備軍といえる。実際に「上司とのコミュニケーション」を想定よりも話しにくいと感じた新人のうち「会社を辞めたくなった」と回答した割合は23.9%もいる。同様に「上司からの仕事のアドバイス」がもらえていない、「上司からのスキルアップのサポート」をしてもらえない新人は、それぞれ26.8%、23.9%が会社を辞めたくなったと答えている。

新人にとっての上司は主任や係長クラスだろう。入社1年目で辞めたくなった人が2割超というのは極めて深刻な事態といえる。本来、入社1年目は先輩社員が指導役になってOJT(職場内教育)を実施している時期であり、管理職を含めて上の人間がサポートしなければいけないはずだ。

中堅サービス業の人事担当者はこう語る。

「大手企業ではOJT担当者が育成プランに基づいて仕事の進め方や悩み相談にのっているところもあるが、多くの中堅・中小企業では管理職が若手社員に『お前が面倒をみろ』と指示するだけで、指導方法も教わらないでやっているのが実態だ」

それでも昔は新人も自然に周囲に溶け込み、育つこともあったが、今はコミュニケーションの接点がなくなっていると嘆く。

「職場の飲み会は極端に減ったし、プライベートな話をすることも減った。マネージャーの責任も大きい。自分の仕事に忙しく、部下が何をやっているのかわからないマネージャーがものすごく増えている。それをさびしいと感じるか、あるいは自由度が高まったと感じる部下もいるだろう。さびしいと感じる新人の中には、身近に先輩ですら相談相手もおらず、間違いなく早期離職につながる。自由度が高まったと感じる部下にしても仕事を見てくれる人がいないと、仕事の壁にぶつかったとき、自分で乗り越えられる壁ならいいが、乗り越えられないと辞めていくだろう」

新人など部下の育成はマネージャーの仕事であるが、日本のマネージャーの9割がプレイングマネージャーだという調査もある。部下の全員の仕事を見るのは無理だと語るのは建設関連業の人事担当者だ。

「課長はどこの会社でもプレイングマネージャーだ。たとえば部下の残業管理をしっかりやれと人事は言うが、10人の部下がいたら、一人ひとりの仕事の進捗しんちょく状況を把握し、これはやらなくてもいい、これを先にやってくれと、優先順位をつけてやらせることになるが、そんなことが本当にできるのか疑問だ。今の課長は部長より忙しく、昔とは違う。それこそ課長の仕事をジョブ型にして、マネジメントに集中させない限り、難しい」