「私一人が犠牲になれば…」

今度はI子さんが担当し、予定時間をオーバーして施術が終了した。彼女が膝をついて「お疲れ様でした」と言葉を発した直後、松本が左手で彼女の右手をぐいと掴み、陰部に当てながら口腔性交を求めたという。

「私は恐怖で震え、局部から目を背けていましたが、さらに私の後頭部をつかんでぐっと局部に押し付けてきたのです。私は抵抗し、性的なサービスはないことを必死に説明しました。自然と涙が出てきましたが、彼は私の涙を見ても力を緩めなかった」(同)

彼女が涙を拭いていても、松本は無視し無言でさっさと着替え、帰って行ったというのだ。

I子さんは当時の葛藤を今でも時折思い出すそうだ。

「私はセラピストの中で一番経歴が長く、実質的な店の責任者。一方で、松本さんはトップクラスの芸能人で影響力がある。彼が本気を出せば、このお店なんてすぐに潰されてしまう。恐怖に打ちのめされた私は正常な判断が出来ず『私一人が犠牲になれば、お店にも迷惑がかからない』と考えてしまった」

しかし、彼女は夫にはすべてを打ち明けたという。

なぜ10年近くたって告発したのか

「夫と警察へ相談しに行こうとしましたが、逆恨みされ、嫌がらせを受けるのではないかと恐怖心が勝ってしまった。店のオーナーも事なかれ主義で私を守ってくれず、ショックのあまり五日ほど出勤できませんでした」(同)

心のバランスを崩したI子さんは心療内科を受診した。診療した担当医が文春の取材に対し次のように明言したそうである。

「診察の結果、不安障害と判断しました」

それから10年近くも悩んだ彼女は、「昨年末、文春に掲載されたA子さんやB子さんの告発を見て、声を上げて良いんだと思った」(文春)と、今年1月13日、夫と共に警視庁渋谷署に相談に行ったのだ。

だが、話を聞いた担当刑事は夫を別室に連れて行き、次のように述べたという。

「強制わいせつ罪の公訴時効は七年。二〇一四年の事案では、すでに時効が成立しており、被害届を受理することはできませんが、性被害の相談という形で受理することはできます」

時効の壁に阻まれたが、彼女の「今も苦しむ人がいることを知ってほしい」という思いは伝わったのではないだろうか。

FRIDAYデジタル(1月25日)はこう報じている。