ちなみに“第4の財布”も存在します。政党から政治家個人に与えられる「政策活動費」は、2021年までの20年間で、主要政党において約456億円支払われました。最多はもちろん自民党で、約379億円。こちらも使途を明らかにしなくてもよく、領収書は不要で非課税です。

実際にどう使われているかはまったく不明ですが、僕が見聞きしたところでは、高額な飲み食いに始まり、高額な贈り物にも使われています。政治家の生活費に充てられている可能性もある。また、党公認の新人候補者への支援金に使われることもあります。立候補するには準備期間が必要です。新人候補者は安定した仕事を辞め、いつ解散総選挙になるかわからない期間を選挙準備に充てます。その間にも生活費や事務所代、人件費、交際費などがかかります。その分を支援するため、幹事長など党幹部の差配で新人候補者へかなりの額を渡すのです。

今回問題となっている派閥の裏金は、新人候補者を派閥に囲い込むためにも使われていたでしょう。

もちろん、これらのお金が「政治活動のために適切に使用した」のであれば非課税で問題ありませんが、そもそも領収書が必要とされていないので、適切に使用したことを誰が保証できるのか。また、政治家の生活費に充てられていたのなら、その分は本来「雑所得」として課税対象になるはずです。つまり、政治家が領収証をきちんと出して政治活動のために適切に使用したことを証明できない限り、国民と同様に納税させるべきなのです。

今は、領収書も出さずに何に使っても、それで私腹を肥やしたとしても、すべて非課税。政治家の特権中の特権です。

余談ですが、安倍晋三元首相の政治資金約2億円も、妻の昭恵さんに非課税で継承されました。国民なら、多額の相続税を納めさせられます。「政治家、いい加減にしろ!」と国民が憤るのも当然ではないでしょうか。

TAX EVASION
写真=iStock.com/designer491
※写真はイメージです

こういう議論になると「ならば100円のアイスを買っても領収書が必要なんですか?」「そんな面倒な事務はナンセンス!」「領収書整理に人手がかかるのでまた金が必要になる!」と逆ギレした議員もいましたが、もちろんたかが100円でも、経費なら僕らは領収書をもらいます。ちなみに自分で食べるアイスは「経費」では落ちません、自分の金で買ってください(苦笑)。ことほど左様に「経費」と「私費」の区別がついていない政治家が多いことに愕然とします。

今回、収入不記載を「事務ミス」と主張し、修正を試みる政治家もいます。でも、何のペナルティもなしで簡単に修正を認めたら世の中の無申告者は全員「ミス」で許されてしまいます。

これが民間であれば、仮に何年間も無申告で脱税を続けていれば、一気に信用も仕事も失います。政治家とて、いや政治家だからこそ、税逃れはミスであったとしても許されることではありません。

「政治とカネ」問題抜本的解決のための4つの提言

整理しましょう。「政治とカネ」問題の抜本的解決に、以下の4点を提言します。

①政治資金は原則所得扱いにし、課税する
②領収書の裏付けのある適切な政治活動費は、非課税とする。つまり政治資金(所得)から領収書で裏付けられる適切な政治活動費(経費)を差し引いて、所得税を課す
③政治資金収支報告書は、確定申告書と同じ扱いにする。記載ミスに対しては所得漏れと同様の厳しいペナルティを科す
④国税庁の専門部署もしくは同等の権限と能力を有する調査機関を設けて、国民の納税を監視するのと同じように、政治家の政治資金をしっかり監視する

現在、デジタル化を進める政府ですが、まずは政治家自ら政治資金の動きを可視化するためにキャッシュレス化を徹底してはいかがか(米国ではとっくに実現していることですが……)。

23年10月からはインボイス制度も始まりました。より細かく税を徴収し、煩雑な作業を国民に強いる以上、政治家が自ら襟を正さないことには、国民は誰も納得しませんよ。我々民間人が100万円を手元に残そうとしたら、いったいどれだけの労力が必要か……。「たかが100万程度の不記載」と放言する永田町政治家のお歴々が、リアルな庶民感覚を持たないことには、国民の政治への信頼は回復しないと思います。

(構成=三浦愛美 撮影=的野弘路)
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