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政治資金でも領収書がなければ原則課税とするべき

今回の政治の裏金問題(あえて政治資金問題ではなく裏金問題と呼びます)は、爆弾級の「政治とカネ」問題に発展しています。報道によれば、安倍派の議員は過去5年間で約5億円、二階派は1億円を超す裏金をキックバックされた可能性があるとのこと。しかし、これはまだ序の口です。政治資金規正法違反罪の公訴時効が5年だからこの額になるわけで、それ以前に遡れば、いったい総額いくらに上るのか。安倍派は20年以上前からこの仕組みを続けてきたという報道もあります。与党の大派閥による組織ぐるみの慣例だったとしたら、開いた口がふさがりません。

大金を懐に入れるスーツの男
写真=iStock.com/AH86
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さて、刑事責任の追及は検察に委ねるとして、問題は今後の改革です。すでに巷では、パーティー券購入者の公開基準を現行の「20万円以上」から「5万円以上」に引き下げる案や、政治資金パーティーそのものを禁止する案などが出ていますが、これらは些末な「周辺的課題」の解決案にすぎず、そこにこだわると、大事な「中心的課題」を見失ってしまいます。

今回の中心的課題は何でしょう。それは「政治家が税金も払わずに私腹を肥やしていたこと」にほかなりません。対する解決策は実にシンプルです。「政治家にも国民と同じ納税ルールを義務付けること」。現状、政治家だけに特例として免除されている申告・納税義務を国民と同レベルに徹底させ、違反の際はペナルティを科す。これだけで事態の99%は解決します。

検察OBなどは「4000万円以上の不記載でないと立件できない」と述べているようですが、それはあくまで政治資金規正法違反における刑事罰に関してのこと。「脱税」ペナルティとなれば話は変わってきます。

この原稿を書いている1月現在、民間人は確定申告作業に追われています。僕も例外ではなく、溢れかえる領収書を整理し、収入から経費をのぞいた所得がいくらになるか計算し、事務所の会計担当や税理士と打ち合わせを重ねています。この作業をおろそかにすれば、申告漏れとして追徴課税や加算税のペナルティを科されるだけでなく、社会的制裁も加えられ、もはやメディア出演や講演会の仕事はなくなるでしょう。だから数字を間違えないように必死になります。

確かに誰でも手元に残るお金を少しでも増やしたい。しかし数字をごまかしたり、ミスしたりすれば大きなペナルティが科される。ゆえに国民は地道にせっせと働き、正直に納税しているのです。ところが当の政治家たちときたらどうか。納税を免れる最強の財布を、複数確保しているのです。

自民党は旧文通費問題に関しても、のらりくらりと改革を避けてきました。国会議員は歳費(給与)とは別に月100万円を「調査研究広報滞在費」(かつての名称は文書通信交通滞在費=文通費)として受領しますが、これは使用基準も範囲も限定されず領収書も不要で情報公開もされません。にもかかわらず非課税なのです。まさに政治家にとって“第2の財布”。そこに新たに“第3の財布”として、キックバックが明るみに出たのです。