幸せとは「自分の居場所」を作ること
【東野】「愛されること」という幸せは、多分、自分の居場所ということだと僕は思うんです。
「たまがわ」を卒業した生徒たちのほとんどは、障害者雇用で働きます。その手取りというのは、おおよそ12万〜13万円です。生活保護でもらえる金額とさして変わりません。働かなくても、生活保護を受ければ、携帯を持つことくらいはできます。多少であれば買い物をしたり、遊んだりすることもできるでしょう。でも、それでは幸せにはなれないんですね。
【黒坂】人が働くのは、お金を得るためだけじゃない。
【東野】人の役に立つ、ということが大切なんです。ここが自分の居場所だと感じ、自分が幸せだと感じられるのは、人の役に立っていると思えるからです。特に「たまがわ」の子たちは、これまで散々怒られたり、バカにされたりした経験を持つ子たちです。そういう子たちが、働くことで人の役に立ち、「おまえが休んだら困る」といわれたらそれはうれしいですよね。
幸せになるっていうのは、そういう形で自分の居場所を確保することだと思うんです。僕らもそうですよね。仕事をしていれば、理不尽なこともあるし、嫌なこともあるし、不幸な経験もするかもしれません。でも、家に帰ってほっとしたり、仕事場で仲間と励ましあったりできれば、なんとかなる。ちょっとしたところに、自分の居場所があればやっていけるんです。
そんな居場所を、障害のある子たちが見つけるのを支援することが、僕らの仕事なんです。生徒たちの新しい居場所探しの手伝いをしているんです。