短距離走者とマラソンランナーでは異なる
今紹介した例は「テレビ的な頭のよさ」ということになりますが、これがラジオであれば、時間枠は15秒より長くなるでしょう。
さらに、大学の授業や講演会で、学生や聴衆の前で話すとなると、時間の捉え方はまた大きく変わってきます。
中身のある話を100分間話し続けるのは、15秒の世界とは異なる力が必要です。
その場その場で求められることが違うということ、それを私たちは理解しなければなりません。
陸上競技であれば、短距離走者とマラソンランナーに求められるものは同じではありません。
ここで今、自分に求められているものが何なのか、それがズレずに判断できる。
もし自分ができそうもないということであれば、「これは私の担当ではないな」と気づくこと。
自分がすばらしいと思っているものでも、別の場で通用するわけではないということがわかる人。
こういう人は頭がいいといわれる人の中に多いのです。
羽生善治はAIに関心を持つ
私たちは新たなものにチャレンジして、自分を向上させていくことが必要です。
マンネリ化せずに、いろいろなことを実践しながら、己の知を新鮮に保つこと。時代の要求に応えていくということです。それは一時代を築いた人も同様です。
棋界のレジェンド・羽生善治さんは、2018年に「竜王」の座を追われて以来、タイトル戦の舞台から遠ざかっていました。
その期間に羽生さんが語った言葉はあまりに印象的です。
当時10代の藤井聡太さんの将棋を「学びたい」と言ったのです。
AIの進化で戦術が大きく様変わりした今の棋界で、羽生さんはAIに強い関心をもち、「過去にこのやり方で勝てたという経験にあまり意味はない。最先端の感覚を取り入れなければ生き残れない」と説いています。
史上初の永世七冠にして棋界のレジェンドと呼ばれる羽生さんでも、今の時代に適応しようとしている。
この柔軟性こそが、頭がいい人の特徴です。