なぜ面倒をかけてでも複数口座が必要なのか
貯蓄のための口座もひとつ作っておく。このように、自分の予算に合わせて用途別に口座を作る。もしこれが面倒なら、銀行からまとめて現金を下ろして、封筒に仕分けしてもいい。手間がかかっても、ぜひやるべきだ。その理由はこうだ。
国家や企業を経営するには、予算を編成しなければならない。年間の収支を予測し、どの分野にどれだけの予算を割り当てるか決める。バランスの取れた予算を編成してこそ、統治も経営もうまくいくからだ。
個人の経済活動も同様だ。基本的な生活費、貯蓄、レクリエーション、教育など、主要な項目に分けて予算を編成しよう。適当に使って残った分だけを貯蓄するというスタイルでは、国家も企業も長くはもたない。国家や企業は部門別に予算を使う権限があるので、他部門の予算に手をつけることはできないが、個人だと境界があいまいになるので、このように口座を別にして強制的に切り分けしておくわけだ。
最後の5つ目は、目標額である1000万円の10分の1をまず貯めることだ。1000万円は大金のようだが、100万円は誰でも努力すれば作れる額だ。目標額は1000万円だが、1年かかろうが2年かかろうが、最初にがんばって10分の1を貯めてしまえば、面白くなって要領もわかってくるので、追加収入も入ってきて興味も湧いてくる。
2回目の100万円を貯めるのは、1回目よりも簡単だ。こうして貯める過程を経験しよう。これが1000万円への道のスタートであり、すべてである。
「お金に清潔な人」ほど、お金の奴隷になる
講演でこの話をすると、若い人たちから決まってこんな質問を受ける。
「お金のことを強調しすぎではありませんか。お金の重要性はわかりますが、そこまでしてお金を貯めていたら、お金の奴隷になってしまいそうです」
私はお金の重要性とお金持ちになる方法を説明しているだけなのだが、貯蓄や投資、節約について触れると、気を悪くする人がいるのだ。だが、私はこの質問をした若者は偽善的だと思う。
お金について話すことさえも軽蔑するようなら、お金持ちになる最初の扉は閉ざされてしまう。それに、お金の存在をないがしろにすること自体、すでにお金の奴隷になったようなものだ。お金のせいで病院にも行けず、勉強もできない。お金のせいで、結婚や子どもも諦めなくてはならない。さらには、親の面倒も見られず、老いても働き口を探し、金策に走り回らねばならない。
それこそ、お金の奴隷ではないか!
韓国の高齢者の半数近くが貧困層だ。高齢者の自殺率は世界第1位を占めており、自殺の3分の1が経済的理由によるものだ。若いときにお金をないがしろにしたせいだ。
節約と貯蓄と投資の大切さを強調するのは、幸福な生活を捨てて守銭奴になれという意味ではない。むしろ逆だ。財産を増やし、経済の仕組みを理解して、お金持ちを目指すことは、たいへん幸せな生き方だ。若いうちからこの幸福への道を歩めば、豊かさが訪れ、さらには他の幸福もついてくる。いますぐハサミを手に机に向かおう。