食後の急激な眠気やだるさは危険

通常、食事をすれば血糖値はゆっくり上がりゆっくり下がるものですが、甘いものや食事を一度に食べすぎると、血糖値は急激に上がります。

すると体はその急上昇を抑えるために、すい臓が大量のインスリンを出し、これを一気に下げにかかります。しかし実はこのインスリン、血中の糖分を脂肪に換えて体に溜め込む働きももっているため、過剰に分泌されると脂肪を溜め込みやすく、太りやすい体をつくります。

これが私たちが「太る理由」のひとつです。

食後に血糖値が急激に上がり急激に下がる状態を「血糖値スパイク」と言いますが、この状態に陥りがちな人は空腹時の検査では正常な人が多いことから「隠れ糖尿病」と言われています。

血糖値スパイクを起こすと、体は一気にインスリンを出しますが、この働きが弱いと食後2時間経っても血糖値が下がらなかったり、逆に過剰に出すぎると急激な眠気やだるさ・頭痛の他、イライラや吐き気をもよおすこともあります。

ですからこれらの意味からも食後きちんと血糖値を下げることは非常に大事になってきます。

そこでご紹介したいのが、ドイツ体育大学の実験です。

ドイツ体育大学では、ドーナツを食べた学生を「食後すぐ歩くグループ」と「じっとしているグループ」に分け、その血糖値を比較しました。

靴ひもを結ぶ人のイメージ
写真=iStock.com/Rossella De Berti
※写真はイメージです

この実験によると、カロリーの高いドーナツは、食後に血糖値の急上昇を招いたものの、すぐに歩いたグループの血糖値は、じっとしていたグループに比べて早く下がることがわかりました。

ウォーキングは「食前」「食後」どちらが有効?

そこでみなさんにご提案したいのは、食べたらすぐに歩いて余分な糖はさっさと使い、血糖値をできるだけ早く下げてほしいということです。

大谷義夫『1日1万歩を続けなさい』(ダイヤモンド社)
大谷義夫『1日1万歩を続けなさい』(ダイヤモンド社)

先日あるテレビ番組が密着取材で我が家にこられ、私が毎日、東武デパートに行って家族のためにケーキを買う様子を取材していかれたのですが、「毎日ケーキを食べて大丈夫ですか?」という質問に、私は「食べたらすぐに歩く」を強調させていただきました。

血糖値を安定させるには「食前」と「食後」どちらのウォーキングが有効かといえば、先の実験結果の通り食後のウォーキングがおすすめです。

ちなみに「食前」のウォーキングには、脱水に陥るリスクがあるというデメリットもありますのでご注意ください。

私たち人間は1日の必要水分量のうちのかなりの部分を食事からとっています。

ですから食事前のウォーキングで汗を大量にかいてしまうと、脱水に陥るリスクが高まるのです。

その意味からもウォーキングは「食前」「食後」どちらにするかを迷ったら「食後」にするのがおすすめです。

【参考文献】
※1 Koyama T, et al. Effect of Underlying Cardiometabolic Diseases on the Association Between Sedentary Time and All‐Cause Mortality in a Large Japanese Population: A Cohort Analysis Based on the J‐MICC Study. J Am Heart Assoc. 2021 Jul6;10(13):e018293. doi: 10.1161/JAHA.120.018293. Epub 2021 Jun 14.
※2 Bauman A et al. The descriptive epidemiology of sitting. A 20-country comparison using the International Physical Activity Questionnaire (IPAQ). Am J Prev Med. 2011 Aug;41(2):228-35. doi: 10.1016/j.amepre.2011.05.003.
※3 Roake J, et al. Sitting Time, Type, and Context Among Long-Term Weight-Loss Maintainers. Obesity. 2021 Jun;29(6):1067-1073. doi: 10.1002/oby.23148.
※4 Gates LS, et al. Recreational Physical Activity and Risk of Incident Knee Osteoarthritis: An International Meta-Analysis of Individual Participant-Level Data. Arthritis Rheumatol. 2022 Apr;74(4):612-622. doi: 10.1002/art.42001.

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